研究課題/領域番号 |
17K00807
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研究機関 | 呉工業高等専門学校 |
研究代表者 |
大和 義昭 呉工業高等専門学校, 建築学分野, 准教授 (20450140)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 着衣熱抵抗 / clo値 / 姿勢 / 日本人 / 温熱環境評価 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,“体温調節機能の働きを前提とした人体を用いたclo 値測定方法の確立”である.これは,平成 25~27 年度に科研費を受けて実施した人体を用いたclo 値測定研究により見出された新たな課題である“体温調節機能のために人体によるclo 値が定温度制御のサーマルマネキンよりも低くなること”への対応と,“測定の高精度化”,さらには“顕熱だけでなく潜熱も含む新たな衣服の断熱性能指標の開発にもつながり得るコードレス化”を目指すためである. この目的のため初年度である平成30年度は,女性用衣服を用いて”サーマルマネキン実験”と”被験者実験”を実施した. ”サーマルマネキン実験”では,半袖・半ズボンの薄着から長袖・長ズボンにコートを羽織った厚着まで,5通りの衣服組み合わせの着衣熱抵抗を,同一で制御方法のみを全体表面温度を33℃に一定に制御した”定温度制御”と全体表面からの放熱流を50W/m2に制御して体温調節機能を有する人体を模擬した”定放熱制御”に変えたサーマルマネキンを用いて測定し,制御方法間で着衣熱抵抗測定結果を比較した.”’被験者実験”では,5通りの衣服のうち2つの衣服組み合わせの着衣熱抵抗を女性被験者5名に呼気代謝分析装置による方法で測定し,その結果を定温度・定放熱制御のサーマルマネキンによる測定結果と比較した. 被験者による着衣熱抵抗測定値は,これまでの研究と同様に,定温度・定放熱いずれのサーマルマネキンよりも小さくなった.一方,定放熱制御マネキンによる着衣熱抵抗は定温度制御マネキンの着衣熱抵抗よりも大きくなった.すなわち,申請者が本研究計画段階で想定した結果とは逆の結果となり,マネキンの設定値の見直しなど,来年度以降の研究での新たな課題が見出された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の期間は3年間であるが,計画では平成30年度と平成31年度の2年間で男性用衣服による”サーマルマネキン実験”と”被験者実験”を実施することを予定している.平成32年度の活動予定は,前年までの2年間で見出された課題に対応する追加実験と得られた成果の論文化である. この予定に対して,平成30年度は,女性用衣服による”サーマルマネキン実験”と女性被験者5名による”被験者実験”を実施できた.男性用衣服による”サーマルマネキン実験”と男性被験者3名による”被験者実験”は平成31年度に実施するよう計画している. 平成30年度の女性用衣服による実験は当初の予定通り進んだが,「研究実績の概要」で述べたように,その結果から新たな課題が見出された.そのため,研究期間の残りの2年間である平成31年度と32年度で,当初予定していた男性用衣服による実験に加えて,表面温度や表面からの放熱流の設定値を変えた”サーマルマネキン実験”の追加実験をする必要が見込まれる.また,今年度の男性用衣服による”被験者実験”においても,女性被験者による実験と同数とするため,被験者をあと2人追加したい. 以上の状況から,現時点では,本研究の進捗状況は,当初の予定に対して,概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は被験者実験を柱の一つとしていることから,研究の順調な進捗には被験者の確保と,確保した被験者との緊密な連絡による健康状態の把握とそれに基づいた実験計画立案・実施が重要である. 平成30年度の女性被験者を使った実験では,被験者の確保,実験計画立案・実施とも計画通りに実施できた.平成31年度も同様に被験者の確保と,確保した被験者との緊密な連絡に務める. 一方の”サーマルマネキン実験”については,実験で使用するサーマルマネキンと人工気候室”住環境シミュレーター”は申請者が優先的に使用できるが,本研究以外の研究課題にも取り組まなければならない状況が発生し,それによってサーマルマネキンや住環境シミュレーターを優先的に使用できなくなったり,あるいは申請者自身のエフォートが割かれてしまったりして,本研究を優先的に進めることができなくなることは考えられる. そのため本研究では,連携研究者や実験補助をしてくれるゼミ所属学生との連携を整備・強化して,たとえ申請者が不在となる期間ができても,申請者以外で研究を実施・遂行できる体制を整備・強化する.これをもって,今後の研究の推進方策とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用する衣服を購入するための費用と実験補助のために学生を雇用するための費用が想定以上に低く抑えられたことが原因である.そのうち後者については,実験を申請者自身が実施することに重きを置いていたことが理由の1つである. 次年度以降の課題に一つは,前述したように,連携研究者や実験補助学生との連携強化とそれにより申請者以外でも実験を実施できる体制の整備・強化である.このためには,連携研究者を招致するための交通費や謝金や補助学生を実験者として雇用するための費用が発生する. 発生した次年度使用額は,当初から平成30年度に使用予定であった予算と合わせて,上記の交通費や謝金,雇用費用として使用する計画である.
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