研究実績の概要 |
本研究では, 液卵の代わりに粉末卵を使用し, ドリュール様の物理化学特性を有する配合割合を明らかにするために, 水, 液全卵, 液卵黄, 粉末全卵, 粉末卵黄を用いて調製したドリュールをクッキー生地に塗布し, 焼成試料における品質 (表面色, 形状, 硬さ, 水分活性)を評価することを目的としている.前年度までに色彩計(カラーリーダー CR-20, コニカミノルタ株式会社)を用い, 室温にて試料表面の色相としてL*値(明度), a*値(赤み度), b*値(黄み度)を測定し,液全卵塗布試料と粉末液卵黄塗布試料の色相が相似していたことから, クッキーを焼成する際のドリュールとしては, 粉末液卵黄が液全卵の代用になることが分かった.今年度は,ドリュール塗布焼成試料の硬さ,水分活性などの品質項目を実験的に明らかにすることを目的とした.性率において, 粉末液卵黄濃度依存性は認められなかった. 粉末液卵黄塗布試料の弾性率が最も高くなったのは粉末液卵黄濃度70%試料で54.3×10^5 Paをとり, 粉末液卵黄濃度10%, 60%, 90%, 100%試料より有意に高くなった. 一方で, 粉末液卵塗布試料の弾性率が最も低くなったのは粉末液卵黄濃度100%試料で20.8×10^5 Paをとり, 粉末液卵黄濃度0%, 30%, 50%, 70%試料より有意に低くなった. 粉末液卵黄塗布試料の水分活性値は0.34~0.53前後を示した. 粉末液卵黄塗布試料は全ての粉末液卵黄濃度において1日後と比較し3,7日後の水分活性値は低くなった. 1日後と3日後の粉末液卵黄塗布試料における水分活性値は粉末液卵黄濃度の依存性は認められなかったが, 7日後の粉末液卵黄塗布試料における水分活性値は粉末液卵黄濃度が上がるにつれ低くなる傾向がみられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では, 昨年度までに液卵の代わりに粉末卵を使用し, ドリュール様の物理化学特性を有する配合割合を明らかにするために, 水, 液全卵, 液卵黄, 粉末全卵, 粉末卵黄を用いて調製したドリュールをクッキー生地に塗布し, 焼成試料における品質 (表面色, 形状, 硬さ, 水分活性)を評価することを目的とした.前年度は,色彩計(カラーリーダー CR-20, コニカミノルタ株式会社)を用い, 室温にて試料表面の色相としてL*値(明度), a*値(赤み度), b*値(黄み度)を測定していた.今年度は,ドリュール塗布焼成試料の硬さ,水分活性などの品質項目を実験的に明らかにすることを目的とした.塗布試料の硬さ測定および水分活性測定により,本研究で得られた成果の範囲が,視覚的ないろ情報のみならず,食感に及ぼす影響や焼成試料の保存性についてまでをも網羅することとなった.このことは,本研究成果の社会への還元の一つとして考えられる,商品化までの道すじを付けたことにも繋がる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では, 昨年度まで液卵の代わりに粉末卵を使用し, ドリュール様の物理化学特性を有する配合割合を明らかにするために, 水, 液全卵, 液卵黄, 粉末全卵, 粉末卵黄を用いて調製したドリュールをクッキー生地に塗布し, 焼成試料における品質 (表面色, 形状, 硬さ, 水分活性)を評価することを目的とした.その結果, 液全卵, 液卵黄, 粉末全卵, 粉末卵黄の4種のドリュールを生地表面に塗布し, クッキーを焼成することで, 色相において, 粉末卵が液卵に代わってドリュールとして利用可能であることが明らかになった. 今後は,硬さ,水分活性などの品質項目を実験的に明らかにした.現時点の課題は,調製したドリュールが時間経過とともに凝集し不均一になる点,スプレー形態の選択などが未解決である.そのため,粉末卵黄を溶解する際に,乳化剤等を添加することにより,エマルションの安定化をはかる予定であるとともに,その安定性について定量的な評価を行う.このことにより,本ドリュールの使用時間の設計が可能となるのみならず,推奨ロットサイズ(容量)の指標ともなる.
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