研究実績の概要 |
本研究は科学研究費基盤研究(C)(26350092)の継続課題として、地球温暖化の気温上昇によって増量している高温障害米の有効活用のため、湿熱米粉の評価と機能性食品添加時の米粉の製パン機構の解明を試みた。 1.湿熱米粉の特性評価:平成30年度と同様の手法で平成22年新潟県三条市産コシヒカリの湿熱米粉を調製し、現有のSII製DSC6100と申請の更新済みDSC炉体部(日立ハイテクサイエンス製)を用いて糊化温度を測定した。完熟米は上昇したが、高温障害米は特性の都合上、調製の影響を受け再検討する必要がある。 2.機能性食品添加時の米粉の製パン機構の解明:実験には平成27年愛知県産粳米(あいちのかおり)の米粉を供した。1)平成29年度に検討した米粉パンの新規製造法に基づき製パンした(申請の恒温恒湿器 東京理化器械製KCL-2000W使用)。機能性食品の添加濃度をさらに低く設定しても製パン性を保てた。2)常温下の顕微鏡観察…常温で卓上顕微鏡観察すると(HITACHI High Technology製TM4000 Plus 1,000倍、3,000倍)、損傷澱粉率が高い米粉は表面の一部に凹凸が見られ、機能性食品はその種類により大きさと形状は異なった。3)加熱後の顕微鏡観察と膨潤度…現有の簡易偏光顕微鏡(オリンパス製CX41LF、DP26-CU、DP2-PC5)で米粉を観察すると(400倍)、損傷澱粉率に関わらず加熱によって粒径が大きくなった。また加熱後の米粉の膨潤度も増加した。4)熱特性…前述と同様のDSC6100、DSC炉体部を用い米粉と機能性食品を25~140℃まで昇温させ(1℃/分)、機能性食品の種類により米粉の糊化温度への影響が異なることを明らかにした。米粉の製パンには添加する機能性食品の形状と熱特性が作用すると推察され、今後は試料の物理化学的特性についてさらに検証する必要がある。
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