本研究では、日本の伝統的な食事を支えてきた伝統野菜に着目し、その評価と伝承に向けた実践研究を行った。 まず、伝統野菜の維持・普及のための栽培条件や調理条件の検討を伊吹大根、杉谷とうがらし、杉谷なすび、下田なす、高月丸なすにおいて行った。栽培条件の再検討、被覆資材・接ぎ木技術を活用により、収量の向上、作期の拡大、連作障害による収量・品質低下の改善を行った。さらに、収穫した果実の成分分析や物性評価を実施して、遜色ない果実が導入した栽培技術を活用して収穫できることを確認した。また、F1品種の青首大根や千両なすを同時期に栽培して対象作物とし、煮る、焼く調理による変化や冷凍保存の可能性を嗜好性と機能性面から検討した。嗜好性成分に関わる検討は、グアニル酸の測定と官能評価により検討した。さらに、DPPHラジカル捕捉活性およびAAPHラジカル捕捉活性を測定して評価した。その結果、F1品種と在来作物間に大きな差がないこと、焼き調理により、どの品種においてもラジカル捕捉活性が高くなることが明らかになるとともに、ナスの場合には焼き調理後の冷凍保存が可能であることが示唆された。学校教育における伝統野菜の活用と継承について検討することを目的に継続的に実践してきた杉谷地区の小学校での総合的な学習の時間における杉谷とうがらしと杉谷なすびを教材とした栽培学習プログラムは、COVID-19下で2020年度の実施は見合わせたが、指導用教材が整理できたことにより、今後、いつでも活用が可能な状態にすることができた。また、小学校生活科における学習プログラムについての検討も行った。
|