本研究は、野菜に対する認識と調理方法の実態を調査し、市販に流通する主な野菜の調理方法の特徴を明らかにした。調査から、家庭における主な野菜の調理方法は炒める調理であることが判明した。 次に、加熱すると甘く感じられるキャベツとパプリカに着目して、キャベツが蒸す調理において甘く感じられることに対し、遊離アミノ酸の可能性があること、パプリカの焼き調理の場合は180℃以上の高温で焼くことで有機酸が減少し、甘味が際立つことを明らかにした。いずれの野菜に関しても、生鮮野菜100gあたりに換算して試料を磨砕して得られる遊離糖の量を検討すると、加熱前後で有意な変動がみられなかった。つまり、加熱による野菜の甘さに関しては、野菜のなかで遊離糖のような甘味成分が増加するのではなく、咀嚼による口腔内への糖リリース量の増加や、遊離糖に対して相乗的な効果を示す成分含有量の変動が加熱による野菜の甘さ評価を高めていると推察した。合わせて、官能評価による甘さ評価は主観的なものであるが、評価の客観性の確保が課題として挙げられた。今後、官能評価の客観性について、また、いくつかの野菜について検討し、仮設の検証を進めたい。 さらに、本研究で得られた知見から、パプリカを生食すると酸味を感じるかもしれないが、焼くと酸味は消え、甘くなるので食べやすくなる、というような味覚教育の指導が提案可能である。苦手意識を刺激するプログラムより甘さ評価や好ましさの分析など肯定的な感覚分析や嗜好評価が偏食の是正に有用ではないかと考える。ただ、インターネット上の調理レシピに動画が登場し、SNS上に食物の画像が散見されるように、食行動の説明・評価が文字ベースから動画・画像ベースに移行しつつある。嗜好評価は文字による伝達が適切と考えるので、ルーブリック評価を取り入れながら、食に関して体系的に考えられるプログラムの開発を今後の課題とする。
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