研究課題/領域番号 |
17K00819
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
和田 浩二 琉球大学, 農学部, 教授 (50201257)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 柑橘 / 精油 / シークヮーサー / 香気成分 / GC / におい嗅ぎ / FDファクター |
研究実績の概要 |
沖縄在来柑橘の精油の香りの構成成分の定性・定量分析を行うとともに、構成成分のにおいの質と強度をガスクロマトグラフィー(GC)-におい嗅ぎ(GC-O)分析により官能的に解析し評価する。さらに、沖縄在来柑橘の精油および構成成分の中で組成やにおいの強度が高かった成分について、ヒトによるストレス低減効果や培養細胞系による抗炎症効果を検証し、多次元的な解析を行う。本年度は沖縄在来柑橘の精油の構成成分および香りの特性の解析を行った。 シークヮーサー果皮に精製水を加えて3時間水蒸気蒸留を行い、精油を調製した。調製した精油のGC分析から香気成分として57成分が検出された。また、本精油を香気抽出物希釈分析(Aroma Extract Dilution Analysis:AEDA)法によりジエチルエーテルにて3のn乗(Flavor Dilution(FD)factor)で段階に希釈したのち、5人のパネリストでGC-O分析した。検出された57成分についてGC-O分析の結果、47成分についてにおい特性が評価でき、FD factorは1~729の値を示した。最も高い729を示したのはlinaloolで、花様のあまい香りを特徴としていた。さらに、FD factorとにおい検出回数の相関を分析した結果、検出頻度には各香気成分の閾値が大きく関わっていることが明らかとなった。さらに、FD factorとにおい強度の相関分析および相対フレーバー活性の評価から、α-cubebene、σ-elemene、gremacrene D、nonanalといった組成比が非常に小さな香気成分も精油の香気特性に大きく影響していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
柑橘精油の香気成分は、内部標準法を用いてGCで定量するとともに、GC/MSにより成分の同定を行うことができた。また、におい嗅ぎ-GCにより香気成分のにおいの質と強度を評価できた。 これらの結果は国際誌や国内学会誌にも掲載されたことから、研究は順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、沖縄在来柑橘の精油およびその構成成分のストレス低減効果の解析を行う。ヒトによるストレス低減効果は、個室空間で香りのない環境(コントロール)と香りのある環境でストレスを伴う作業を実施し、作業効率、作業前後や作業中の心理的評価および生化学的評価によりその効果を解析する。評価試験の被験者は10名程度とし、被験者は室内に入る前に生理的評価となるバイオマーカー(α-アミラーゼおよびコルチゾール)測定のために唾液が採取され、心理的評価としてPOMS(気分プロフィール検査)を受ける。次に、脳波および心電図測定装置を装着し、室内に入った後、香りやストレス作業(オドボール課題)を一定時間提示され、その間の脳波および心電図がモニターされる。ストレス作業終了後、作業前との比較のため、唾液の採取とPOMSを再度実施する。脳波の周波数帯域はα波、β波、θ波、δ波、測定部位はFZ、CZ、PZ、OZとする。心電図から心拍変動をRR間隔、LF値、HF値、LF/HF比、complex demodulationにより解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はGC分析関連の消耗品費と実験補助員費を主要に計上していたが、GC分析関連の経費が予想ほどかからなかったためと考える。 次年度は消耗品として、バイオマーカー測定キット、培養細胞、成分分析に必要な分析用試薬、ガラス器具等の購入を予定している。また、学会(日本食品保蔵科学会、日本食品科学工学会)への参加費、論文の英文校閲費用、さらに研究を加速させるために実験の補助やデータ解析のための研究員を雇用する予定である。
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