研究課題/領域番号 |
17K00819
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
和田 浩二 琉球大学, 農学部, 教授 (50201257)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 柑橘 / シークヮーサー / 精油 / 香気成分 / ストレス / 心理的評価 / 生理的評価 |
研究実績の概要 |
沖縄在来柑橘の精油の香りの構成成分の定性・定量分析を行うとともに、構成成分の香りの質と強度を官能的に解析し評価する。さらに、沖縄在来柑橘の精油および構成成分の中で組成や香りの強度の高かった成分について、ヒトによるストレス低減効果や培養細胞系による抗炎症効果を検証し、多次元的な解析を行う。本年度は、沖縄在来柑橘の精油およびその構成成分のストレス低減効果の解析を行った。 香りのない環境(コントロール)と香りのある環境でストレスを伴う作業を実施後、POMS(Profile of Mood States)を用いて心理的な評価(POMS)を行った結果、シークヮーサー精油の香りの環境下では、香りのない環境(コントロール)に比べ、「活気」が上昇し、「疲労」が軽減されることが示されたが、生理的評価であるα-アミラーゼに有意差は認められなかった。一方、シークヮーサー精油のなかでも油臭の不快なにおい特性をもつγ-terpineneの香り環境下ではβ波とθ波の出現が少なかったことから、活動的な状態であることが示唆された。また、心拍変動はストレスを伴う作業前から作業後で有意に変化したことから、作業後のストレスが低減されることが示された。以上のことから、シークヮーサー精油およびその構成成分が脳の神経活動に影響を及ぼすことが示唆された。 なお、次年度予定しているシークヮーサー精油の抗炎症効果の評価系に用いるマウスミクログリア細胞BV-2の培養条件の最適化の検討も実施できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
沖縄在来柑橘の精油およびその構成成分のストレス低減効果について、心理的評価および生理的評価の解析結果から、柑橘の精油やその香りがストレス作業中や作業後の脳の神経活動に影響を及ぼすことを確認することができた。また、次年度予定している沖縄在来柑橘の精油およびその構成成分の抗炎症効果の評価系に用いるマウスミクログリア細胞BV-2の培養条件の検討も実施できたことから、研究はおおむね順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、沖縄在来柑橘の精油およびその構成成分の抗炎症効果の解析を行う。抗炎症効果の解析には、沖縄在来柑橘の精油および組成比の高いlimoneneとγ-terpineneを用いて行う。抗炎症効果の評価には、マウスミクログリア細胞を用い、本年度設定した最適な培養条件で精油および香り成分の細胞毒性試験を実施し、細胞毒性のない濃度範囲をまず決定する。また、抗炎症効果はバイオマーカーとしてlipopolysaccharide刺激によるNO産生量とIL-1βの産生量をそれぞれGriess法およびELISA キットを用いて測定し、解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はストレス評価に関連する消耗品費と実験補助員費を主要に計上していたが、培養条件の予備検討を含めた消耗品の経費がかからなかったためと考える。次年度は消耗品として、価格が高いバイオマーカー測定キット、培養細胞、成分分析に必要な分析用試薬、ガラス器具等の購入を予定している。また、学会(日本食品科学工学会等)への参加旅費、論文の英文校閲費用、さらに研究を加速させるために実験の補助やデータ解析のための研究員を雇用する予定である。
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