研究課題/領域番号 |
17K00820
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
松本 健司 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (60288701)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | レジスタントスターチの機能性 |
研究実績の概要 |
本年度の計画は複数のサンプルから加熱加工調理に適したレジスタントスターチ(RS)サンプルを選抜することと、RSの種類による機能性比較を行うことである。RSサンプルとして水溶性サンプルを4種類、不溶性サンプルを6種類用いて実験を行った。 ・水溶性サンプルの機能評価:4種類の水溶性サンプルまたはコーンスターチを通常食および高脂肪食に5%添加し、マウスに4週間摂取させることで機能性を評価した。評価項目は食物繊維様作用(糞重量および糞中総脂質の量により評価)、腸内での資化性(盲腸内容物の量、pH、短鎖脂肪酸量により評価)、腸管免疫(糞中IgA量により評価)の3項目とした。食物繊維用作用は通常食ではほとんど無く、高脂肪飼料では3サンプルにおいて強く確認された。また、糞量の増加や高脂肪食での糞中総脂質量の増加が見られるサンプルは糞のIgAも誘導していることが明らかになり、非消化性グルカンが腸管免疫を刺激していると考えられた。盲腸内容物はすべてのサンプルで増加していたが、短鎖脂肪酸、pHへの影響があったサンプルは2サンプルであり、通常食と高脂肪食でも差があった。 ・不溶性サンプルの評価:不溶性サンプルは加熱調理が必要であるため、サンプルを20%含むパンケーキを焼成し評価を行った。加熱加工によるRS含量の変化を検討したところ、酸処理や湿熱処理がなされていないハイアミロースコーンスターチなどはパンケーキ中ではRS含量が20%程度に減少してしまった。一方、酸処理や湿熱処理を行ったRSは加熱調理しても80%程度RS含量を維持していた。さらに、官能評価を実施したところ、各サンプルは硬さやもちもち感などの食感に影響を与えており、硬さについてはレオメーターとの相関性が得られた。以上の結果から来年度以降の試験には湿熱処理を行ったハイアミロースコーンスターチに絞って研究を実施することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画では難消化性デキストリンなどの水溶性難消化性グルカンを含む10種類程度のレジスタントスターチ(RS)をサンプルとして調理加工に適したサンプルの選抜と一部サンプルの機能性比較である。RSサンプルとして水溶性サンプルを4種類、不溶性サンプル6種類を複数の企業から提供していただき、これらについて計画書にそって研究を実施した。いずれの実験においてもコントロールとしてコーンスターチを用いた。水溶性サンプルに関しては市販のRSアッセイキットでは測定できないことから、4週間のマウスでの試験を行い食物繊維用作用、腸内での資化性、腸管免疫への影響を評価することで最適なサンプルを選抜することとした。4種類のサンプルの中で1種類が3項目すべてにおいて有効であり、血液生化学値にもマイナスな影響を与えなかったことから来年度以降のサンプルとして選抜することが出来た。不溶性サンプルに関しては加熱調理を行いRS残量と美味しさの観点から選抜を行った。加熱調理として再現性の高い調理法であるパンケーキとパスタを作製したが、パスタでは多くのサンプルで茹で時にデンプンが溶出してしまったため、パンケーキに絞り実験を行った。RS残量に関しては酸や湿熱処理がなされていないRSおよび1種類の架橋デンプン(4型RS)は加熱調理後にRSが8割程度減少してしまった。一方、酸や湿熱処理がされているRSは減少が2割程度にとどまった。美味しさの評価は官能評価とレオメーターを用いた分析を行うことによって実施した。RSの含量と美味しさにはほとんど相関は無く、硬さが大きく変化したサンプルは1種類であった。これらの評価から湿熱処理を行ったハイアミロースコーンスターチを選抜することが出来た。 以上の結果から2種類のRSが選抜でき、複数の水溶性RSの機能性比較が行われたため、平成29年度は予定通り実験を実施することが出来たと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の実験結果から本研究に適した水溶性サンプル、不溶性サンプルのレジスタントスターチ(RS)を2種類選抜した。計画書では5種類程度のサンプルが選抜できる予定であったが、条件に適したサンプルは2種類であったので、この2種類のサンプルを中心に研究計画書にそって以下の2つの実験を行う。 ①種類の異なるRSの機能性比較:高脂肪食に飼料中のRS含量が同程度になるようにサンプルを添加して、C57BL/6マウスを用いた肥満マウスモデルにおいて各サンプルの機能性比較を行う。機能性は糖代謝、脂質代謝、腸管免疫についての評価を行う。さらに、作用メカニズムを検討するために肝臓などでのエネルギー代謝に関係する遺伝子発現解析を実施する。 ②調理加工したRSの機能性比較:パンケーキの生地にサンプルを添加することにより加熱加工処理を行ったRSサンプルを作製し、加工処理していない生のサンプルとの機能性の比較を行う。この実験によってRSサンプルの有効性が加熱加工後も維持できるかどうかを明らかにする。機能性の比較は実験①と同様に、C57BL/6マウスに高脂肪食を摂取させる肥満モデルを用いて行い、糖代謝、脂質代謝、腸管免疫についての評価を行う。
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