研究課題
伝統食品の代表格である塩蔵食品は、冷蔵庫などの食品の保冷設備がない時代における「食の知恵」の産物である。日本各地では、食品の保存性向上のために塩を用いた塩蔵食品が数多く存在している。また周囲を海で囲まれた日本では、その豊富な水産資源を利用した塩蔵食品が数多く生み出されており、近年では、製造時に使用する食塩の量を減らした低塩分の塩蔵食品に人気が集まっている。一方で、低塩分化によるこの食品の安全性の低下は大きな問題となっている。そこで、低塩分の塩蔵食品の細菌性食中毒に対する安全性を評価し、さらに安全な塩蔵食品の製造方法の確立に取り組むこととした。これまでに各種の塩蔵食品の市場調査を実施し、それら製品の安全性について、塩分濃度や水分活性を指標として、細菌汚染の実態を明らかにした。またさらに東南アジア各国で製造されている塩蔵食品について、市場調査を行い、それら食品の特徴を明らかにするためのフィールド調査を実施した。そして、これまでに得られた市販塩蔵食品の安全性評価の結果をふまえて、安全な塩蔵食品の製造方法を検討した。まず自家製の塩蔵食品、イカ塩辛を作製し、塩分濃度及び水分活性を指標として、細菌汚染の実態及び細菌の消長について調べた。理化学的特性として、低塩分のイカ塩辛(塩分濃度が3.7%)では水分活性が上昇(0.87Aw)し、一方で高塩分のイカ塩辛(塩分濃度が12%)では水分活性が減少(0.73Aw)した。そして両方の自家製イカ塩辛の一般生菌数を比較すると、低塩分のものは高塩分のものよりも10倍程度細菌数が高いことが分かった。また両方の自家製イカ塩辛で食中毒菌の腸炎ビブリオの検出及び増加は見られなかった。これらのことから、伝統的な高塩分のイカ塩辛は、細菌汚染及び食中毒リスクは低く、各家庭で調理製造する場合であっても、安全なイカ塩辛を作ることができることが分かった。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
Microbial Risk Analysis
巻: 12 ページ: 11-19
10.1016/j.mran.2019.02.001