研究課題/領域番号 |
17K00833
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
福永 健治 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (30278634)
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研究分担者 |
細見 亮太 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (20620090)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 魚肉タンパク質 / 加熱処理 / 糖質分解酵素阻害 / アミラーゼ / グルコシターゼ |
研究実績の概要 |
本年度は、血糖値上昇抑制の要因となる糖質分解酵素阻害活性について、非加熱魚肉タンパク質(FP)および加熱FPの人工消化物を用いて評価した。 試料はスケトウダラとクロマグロを用いた。非加熱FPは、各フィレーを細切し、凍結乾燥後、脱脂して調製した。加熱FPは、フィレーを100℃で5分間蒸煮し、これ以降は非加熱FPと同様の方法で調製した。調製した非加熱FPおよび加熱FPをペプシンによって120分消化した。その後、パンクレアチンを用いて消化した。人工消化試験中に消化液を経時的に回収し,トリクロロ酢酸で反応停止し,ピクリルスルホン酸を加えて発色させ,遊離アミノ酸を定量し,人工消化率を算出した。また、SDS-PAGEにより、非加熱FPおよび加熱FPの分子量を測定し、比較を行った。さらに消化前、ペプシン消化後、パンクレアチン消化後の消化液を用いて、糖質分解酵素阻害活性評価を行った。 消化率は、非加熱および加熱FPを比較したところ、大きな違いは見られなかった。また、SDS-PAGEについて、スケトウダラおよびマグロの非加熱および加熱FPを比較したところ、大きな違いは見られなかった。アミラーゼ阻害活性は、スケトウダラFPでは消化前、ペプシン後、パンクレアチン後ともに約40%程度の阻害活性があった。また、ペプシン後およびパンクレアチン後の非加熱スケトウダラFPで、加熱スケトウダラFPよりも、有意に高い阻害活性を示した。一方、グルコシダーゼ阻害活性は、非加熱および加熱スケトウダラとマグロFP間で、消化前、ペプシン後、パンクレアチン後のいずれにおいても有意な変化はみられなかった。 以上のことから、FPの加熱処理は糖質分解酵素阻害活性に影響していない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の実施予定であった、スケトウダラおよびクロマグロを用いて、非加熱および加熱魚肉タンパク質(FP)を調製した。これらを胃および小腸をモデルとした人工消化試験によって胃消化および小腸消化後のタンパク質分解物を採取した。その際に、消化液中の遊離アミノ酸濃度を測定し、人工消化率を求めた。タンパク質分解物を用いて糖質分解酵素阻害活性を求めたが、加熱処理の有無によって、糖質分解酵素阻害活性に影響を及ぼさないことが示唆された。また、FPの加熱処理は、タンパク質構成アミノ酸組成やタンパク質分子量プロファイルには影響を及ぼさないことが示唆された。このように平成29年度実施予定であった研究項目について順調にデータが得られている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、平成29年度の採取したタンパク質分解物を用いて、胆汁酸結合能、膵リパーゼおよび活性阻害といった脂質吸収に関連する評価項目を測定する。また物理化学的性質として水への溶解度、水分保有量を評価し、生体調節機能向上との関連を解析する。 in vitro試験結果から、高い効果の得られた加熱魚肉タンパク質を実験動物に給餌し、生体内での糖・脂質代謝改善機能について評価する。とくに血糖値上昇抑制および高脂血症に対する効果を評価する。評価項目としては、経口ブドウ糖負荷試験による血糖値上昇抑制、血清および臓器の脂質成分組成や糞への脂質排泄量を評価する。また必要に応じて各組織の病理組織検査によって臓器の炎症・損傷度合いおよび脂肪細胞の肥大も合わせて評価する。現代の日本において増加が著しい過食による肥満や臓器の脂質蓄積に対する加熱魚肉タンパク質の影響を明らかにしていく。
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