研究課題/領域番号 |
17K00833
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
福永 健治 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (30278634)
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研究分担者 |
細見 亮太 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (20620090)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 魚肉タンパク質 / 加熱処理 / 胆汁酸結合能 / 血糖値 |
研究実績の概要 |
本年度は、非加熱魚肉タンパク質(FP)および加熱FPについて、人工消化で得た消化物の胆汁酸結合能をin vitro系で評価した。さらに、ラットに各FPを給餌し、経口糖負荷試験(OGTT)により、血糖値およびインスリン濃度に及ぼす影響を評価した。 FPはスケトウダラおよびマグロから調製した。まず、インタクトのスケトウダラとマグロ由来FP間で比較すると、スケトウダラ由来FPで胆汁酸結合能が高かった。次に、ペプシン処理後のFPでは、非加熱FPと比べ、加熱処理FPで高い胆汁酸結合能を示した。一方、パンクレアチン処理後では、非加熱および加熱処理間で胆汁酸結合能の差異はみられなくなった。消化管内でタンパク質と胆汁酸の相互作用は、疎水結合によって形成されている。加熱調理によりタンパク質が変性し、内部に存在している疎水部分が表面に現れるため、加熱処理FPで非加熱FPよりも高い胆汁酸結合能がみられたと考えられる。しかし、パンクレアチン処理後では、タンパク質の多くが消化されており、加熱処理による胆汁酸結合能の差異はなくなったと考えられる。 OGTT試験の結果、対照群と比較して、非加熱および加熱FP給餌群では、グルコース投与30分後の血糖値の低下がみられた。一方、インスリン負荷試験の結果、対照群と比較して、加熱FP給餌群で対照群および非加熱FP群と比較して、インスリン投与60-120後の血糖値の低値がみられた。そのため、非加熱および加熱FPの摂取には血糖値の上昇抑制効果がみられ、とくに加熱FPの摂取にはインスリン作用を増加する働きがある可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度の実施予定であった、非加熱魚肉タンパク質(FP)および加熱FP のin vitro系での胆汁酸結合能の評価、およびこれらの糖代謝に及ぼす影響をin vivo系で評価した。このように2018年度実施予定であった研究項目について順調にデータが得られていることから、「概ね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、魚肉タンパク質を加熱処理することによって血糖値の上昇が変化する要因を明らかにする。そのため、糖・脂質代謝の律速酵素および転写因子について、とくに肝臓のmRNA発現レベルでの影響を詳細に調べ、作用機序の解明を行う。現代の日本において増加が著しい過食による肥満や臓器の脂質蓄積に対する加熱FPの影響を明らかにしていく。
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