本年度は、魚肉たんぱく質(FP)の加熱処理が消化性および非消化性タンパク質の生成への影響を評価するため、マダラを材料に人工消化試験を実施した。さらに昨年度得られた加熱FP給餌によるラットのインスリン作用増強メカニズムを解明するため、腸内細菌叢の変化に着目し実験を行った。 人工消化中のタンパク質消化率は、生および加熱マダラで大きな変化は見られなかった。一方、不溶性成分の生成率は、生マダラで3.6%(w/w)および加熱マダラで5.4%(w/w)であった。生マダラを160℃で30分間蒸煮することによって、不溶性成分が増加することがわかった。異なる加熱時間のマダラのタンパク質消化率および不溶性成分の生成に大きな差はみられなかった。生および加熱マダラのBPB結合量を比較することによって、加熱後は表面疎水度が高かった。そのため、加熱がマダラのタンパク質の表面疎水度に影響することがわかった。 腸内細菌叢の網羅的解析は次世代シークエンサーを用いた。属レベルのChao1推定量において、FP給餌群で対照群と比較して、有意な高値がみられた。一方、属レベルのSimpson指数において、各群間で有意な変化は見られなかった。このことから、FP給餌によって、検出される菌種は増加するが、この増加した菌種の構成比率は低いと考えられる。対照群と比較して、FP給餌群においてBacteroidetes門の構成比率の有意な増加およびFirmicutes門の構成比率の有意な低下が認められた。また、主成分分析の結果、FPの給餌は対照群と比較して異なる影響を与えることが示唆された。これらのことから、カゼインの給餌と比較して、FPの給餌はラットの腸内細菌叢に及ぼす影響が異なることが示唆された。
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