減塩食などおいしさに満足できない食をおいしくすることは、摂食量を増加させ、低栄養を防止するうえで重要である。生体内にあって代謝亢進、解毒作用など 生理機能を高める物質を候補として選び、減塩味噌汁に添加して嗜好性が高まるかどうかを動物の行動実験により調べる。候補物質については、味神経応答の解 析、関与する脳内物質の同定と動態などの神経科学的研究を行う。 「体に良いもの、体が必要とするものはそれ自身がおいしいか、その存在により食べ物がよりおいしくなり、摂取が促進される」という原則を活用し、本研究で は、生体内にあって代謝亢進、解毒作用、抗疲労、抗酸化など生理機能を高める物質の中 から、おいしさを増強する物質を探索しつつあるが、オルニチン、グルコサミン、カルノシンなどにおいしさ増強効果のあることが示唆された。 昨年度は、マ ウスに加えてラットも用い、コクを出す物質として知られるγ-Glu-Val-Gly(EVG)やオルニチンのおいしさ増強効果を2ビン法と味神経からの電 気生理学的 応答から確認した。またその受容体がカルシウム感受性受容体(CaSR)やGPRC6Aであることもantagonistの作用により確認できた。EVGとオルニチンではその作 用機序 に違いがあることも示唆され、今後の研究を更に進展させるべき興味深い知見と考えられた。 以前のマウスでの行動実験ではγEVGの添加効果が明確に は示せなかったが、ラットでは、効果があることがわかった。ただし、ヒトでの効果とは異なりMSGへ の添加効果が期待したほど強くなかったことなどから、種差が存在 する可能性がある。また、味細胞にGPRC6Aの受容体が発現するか否かを検討し、マウス、ラットの2型、3型味細胞に発現することが明らかとなった。また、ラットでは葉状、有郭乳頭に比べ茸状乳頭で発現が顕著であることがわかった。
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