研究課題/領域番号 |
17K00837
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研究機関 | 四国大学 |
研究代表者 |
岡崎 貴世 四国大学, 生活科学部, 教授 (10227738)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒスタミン / 食中毒予防 / 制御 |
研究実績の概要 |
ヒスタミン食中毒は、主に海水に生息する細菌が魚肉中のアミノ酸(ヒスチジン)を分解してヒスタミンを生成・蓄積し、これらの食材を摂食することで起こる。本研究は生鮮魚介類等からヒスタミン生成菌を分離し、同定および増殖特性を明らかにし、得られたデータをもとに制御方法を検討してヒスタミン食中毒予防法を確立することを目的とする。 生鮮魚介類および加工品24検体の細菌汚染状況を調査した結果、一般生菌:1.9~6.1 log CFU/g、低温細菌:2.4~6.6 log CFU/g、大腸菌群:1.9~5.2 log CFU/g であった。細菌検査後、形成されたコロニーから無作為に菌を選択し、改良Niven培地を用いてヒスタミン生成の有無を調べたところ、ヒスタミン生成菌の分離頻度は約5%であることがわかった。これらの分離菌は、3.5%食塩存在下で80%が増殖したが、10.5%食塩存在下では増殖は抑制された。また、ほとんどの分離菌が5℃の低温下において、わずか1日で増殖可能であることが分かった。そのため、ヒスタミン食中毒の予防を低温管理のみに依存することは十分ではなく、他の予防法と併用する必要があることが示唆された。 分離菌のヒスタミン生成能をヒスチジン培地で測定すると、1株はヒスタミン生成標準株であるMorganella morganiiやRaoultella planticolaに匹敵する量のヒスタミンを生成するものが確認された。この菌はKlebsiella oxytocaと同定された。また分離菌の中には、消毒剤等に対して高い抵抗性を示すブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌のPseudomonas属菌などが含まれていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、生鮮魚介類および加工品の細菌汚染状況とヒスタミン生成菌の検出頻度を明らかにし、菌の分離と同定およびヒスタミン生成菌の増殖特性の測定を行い、ヒスタミン食中毒予防法を検討する基礎データを得た。ヒスタミン生成菌の検出頻度が研究開始当初の想定よりも低かったが、平成30年度以降研究を進める上で支障はないと判断した。そのため研究達成度は、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に得られた結果をもとに、ヒスタミン生成菌制御方法を検討する。魚介類の加工過程・流通過程を想定して、殺菌消毒剤の効果的な使用方法を検討する。特に、各種環境要因が消毒剤の殺菌作用におよぼす影響を検討する。また、菌汚染モデル食品を調整し、魚介類に付着するヒスタミン生成菌の制御方法を検討する。 具体的な環境要因として、栄養成分であるタンパク質や糖など有機物の存在、処理温度、魚肉に付着するヒスタミン生成菌量の影響などを検討する。供試菌として、ヒスタミン生成分離菌とヒスタミン生成標準株(Morganella morganii、Raoultella planticola)を用いる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、生鮮魚類等の検査試料からヒスタミン生成菌の分離を行なった。しかし検出頻度が想定より低く、その後の菌の同定、増殖特性の測定などの実験費用が当初見込みより少額となった。ヒスタミン標準株に匹敵するヒスタミンを生成する分離株が得られたためその後の研究遂行に支障はないと判断した。 平成30年度は、分離株を用いてヒスタミン生成菌の制御に関する研究を行う予定である。ただし検出頻度が低かった要因を明らかにしておく必要があると考え、平成29年度に検査できていない流通過程の生鮮魚類を試料として細菌検査を行うこととする。
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