本研究は生鮮魚介類およびその加工品等からヒスタミン生成菌(Hm(+)菌)を分離し、分離菌の同定、増殖特性及びヒスタミン生成能を明らかにし、得られたデータをもとにHm(+)菌の制御方法を検討してヒスタミン食中毒の予防に役立てることを目的とする。 分離菌5株のうち最もヒスタミン生成量が多く、また低温増殖性のKlebsiella oxytocaを供試菌とし、赤身魚(アジ)に菌を接種し、Hm(+)菌汚染モデル赤身魚を調整した。同様にHm(+)標準株のモルガン菌(Morganella morganii subsp. morganii NBRC 3848)を用い、Hm(+)菌汚染モデル赤身魚を調整した。 これまでの測定結果から、処理液である塩素系消毒液(亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム溶液)はHm(+)菌の増殖抑制には有効であるが殺菌効果はあまり期待できないこと、処理液に長時間浸漬することで塩素臭と魚表面のタンパク質変性が生じる問題点が明らかになっている。そこで、処理液(pH5)に10分間、複数回(1-3回)の浸漬による効果を検討した。処理液の効果は次亜塩素酸溶液よりも亜塩素酸水の方が高い傾向が見られた。また処理液への浸漬回数が増えることで汚染モデル赤身魚から検出される菌数は減少し、3回の浸漬で検出下限を下回った。この菌数減少の効果は消毒液を含まない滅菌水(pH5)処理においても、減少値は小さいものの認められたことから、処理液の消毒効果に加え浸漬を繰り返すことにより物理的に菌が洗い流されたことも要因と考えられた。塩素系消毒液は魚介類から溶出する有機物の影響を受けて消毒効果が著しく減少するため、魚介類の処理時に十分な洗浄を行うことで消毒剤をより有効に使用できると考えられた。
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