ツタンカーメンエンドウは、未熟な豆である実を食する実エンドウである。その実は一般品種と同様に緑色をしているが、加熱・保温によって赤く着色する。しかし、その着色の原因となる物質やその着色反応のメカニズムについては解明されていない。また、ツタンカーメンエンドウは一般品種と比較して、DPPHラジカル消去活性を指標とした抗酸化性が高いが、その抗酸化性成分も未同定である。さらに、莢は紫色をしているが通常廃棄されている。本研究では以下の3つの項目について検討し、次の成果を得た。 (1)実の抗酸化成分の同定および調理による抗酸化成分の挙動解析:主要な抗酸化成分をDPPHラジカル消去活性を指標に追跡し、質量分析により種皮に存在するエピガロカテキンの二量体であることを明らかにした。各種調理後の抗酸化性の評価から、当該成分は加熱後も活性を維持するが水媒体に溶出し易いことが判明した。これらの結果から、ツタンカーメン豆の抗酸化性を食生活において効果的に利用する調理方法として、煮汁を煮含ませた煮豆やスープ料理が適することを提示することができた。 (2)実の加熱中に生じる着色反応機構の解明:各種機器分析ならびにモデル実験により、着色反応における着色源はエピガロカテキンの二量体であり、着色はその酸化によって生じることを証明した。特に当該成分は、主要な抗酸化成分と共通であり、ツタンカーメーンエンドウを特徴づける鍵成分である。 (3)莢の有効活用の可能性:莢に含まれる抗酸化成分として、デルフィニジンおよびシアニジンをアグリコンとするアントシアニンを同定した。さらに、対照のウスイエンドウと比較して有意に高い抗酸化性を示し、実験動物において、鉄投与による生体酸化ストレスを抑制することが明らかになった。これらの成果は、約50%の廃棄部に相当する未利用資源の価値を見出したものであり、有効活用につながる基盤情報となる。
|