遺跡出土の動物遺存体などの食料残滓から、古代における食生活の実態を明らかにした。古代では木簡や延喜式によって日本各地から都へ貢進された貝類が具体的に判明しており、アワビを中心とした岩礁域で採集できる貝類に集中することが知られている。一方で、ハマグリやマガキ、アサリなど大量に採集できる貝類は、木簡や延喜式にはほとんど見られなかった。そこで、上総・下総国域を事例として、地域における貝類利用の実態を検討した。沿岸部ではマガキ、ハマグリ、シオフキなど集落周辺に生息する貝類を採集・消費しており、海岸環境の違いを反映して多様性が認められた。また、大量の殻付き貝類が陸路で内陸部まで運ばれていた。
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