インスリン抵抗性のメカニズムとして、エネルギー代謝において、脂質の同化に比し、糖 炭水化物同化が過少となること、つまり糖/脂質バランスの崩れ(Carbohydrate-lipid imbalance)が重要であることを提唱してきた。この代謝制御による糖/脂質調節機構(Carbohydrate-lipid balance)を明らかにすることで、各代謝臓器の各論的な側面では語ることのできなかった統合的な制御機構が明らかになると考えられる。このような発想のもとに、本発明者らは、飢餓時における肝グリコーゲン消費情報から肝迷走神経を介して生理的な脂肪分解を引き起こす経路を明らかにした。また、制御機構を規定する肝の代謝基盤として、グリコーゲン消費を感知する未知の“グリコーゲン センサー”が存在することを明らかにした。さらに、この代謝制御性神経回路は、肝から迷走神経を介して中枢神経系へ送られ、そこから交感神経遠心路を通じて脂肪組織が刺激されて脂肪分解が生じることを明らかにした。肝代謝パターンを神経系共通情報として翻訳するメカニズムの探求を通して、神経系代謝制御に介入しエネルギーホメオシターシスを制御する基盤となるメカニズムの解明に取り組んだ結果、肝から生合成される分子Xを阻害することにより、肝細胞のエネルギー基質として、糖質であるグリコーゲンと比して中性脂肪を優先的に利用すると同時に、脂肪組織の中性脂肪分解を促進して脂肪量を減少させ、その脂肪組織を褐色脂肪組織化することができ、これらメカニズムの総和として肝のβ酸化亢進と炎症抑制、酸化ストレスの軽減に繋がることを見出した。 この知見をもとにPCT国際特許公開を行った。International Application No.:PCT/JP2017/018093 PublicationDate:16.11.2017
|