近年、様々な疾患において小胞体ストレスによる細胞機能の障害、炎症、細胞死が大きく関与していることが明らかになってきた。本研究では、動脈硬化の進展に重要な血管炎症に対して、小胞体ストレスがどのように関与しているのか、またどのような食品成分により改善されるのかを検討し、小胞体ストレスの制御を基盤とした食品による動脈硬化予防機構を明らかにすることを目的とした。 初年度の本年は、まず飽和脂肪酸刺激による血管炎症における小胞体ストレスの関与を検討するため、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)とヒト単球系細胞THP-1を用いて実験を行った。HUVECに飽和脂肪酸であるパルミチン酸を作用させると、炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8)や接着分子(ICAM-1、VCAM-1)などの発現増加に加えて、小胞体ストレスマーカーであるGRP78、sXBP1、ATF3、ATF4、CHOPのmRNA発現量の顕著な増加が認められた。PERKのリン酸化、eIF2αのリン酸化、ATF4の核移行について、ウェスタンブロットにて確認し、これらの阻害剤やsiRNAによるノックダウンの影響を検討した。THP-1細胞においてもパルミチン酸刺激を試みたが、小胞体ストレスマーカーに対する影響が顕著でなかったため、まずは小胞体ストレス誘導剤であるTunicamycinやThapsigarginを使用して評価を行った。いずれの細胞においても、ポリフェノールやカロテノイドの影響を検討し、血管炎症ならびに小胞体ストレスに対して抑制作用を発揮する成分を複数見出すことができた。
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