近年、様々な疾患において小胞体ストレスによる細胞機能の障害、炎症、細胞死が大きく関与していることが明らかになってきた。本研究では、動脈硬化の進展に重要な血管炎症に対して、小胞体ストレスがどのように関与しているのか、またどのような食品成分により改善されるのかを検討し、小胞体ストレスの制御を基盤とした食品による動脈硬化予防機構を明らかにすることを目的とした。 二年目の本年は、初年度に引き続き、動脈硬化の進展に重要な役割を担う血管内皮細胞ならびに単球系細胞を用いて、小胞体ストレス抑制作用を有する食品成分の探索と作用機序の検討を行った。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に小胞体ストレス誘導剤であるThapsigarginを添加し、小胞体ストレスマーカー(GRP78、CHOP等)のmRNA発現誘導に対するポリフェノールの影響を検討した。その結果、いくつかのフラボノイド類に顕著な抑制作用が認められた。ヒト単球系細胞THP-1細胞における検討では、Thapsigarginにより誘導された小胞体ストレスマーカー(GRP78、sXBP1、ATF3、ATF4、EDEM1、ERdj5等)のmRNA発現量が、抹茶抽出液ならびに主要なポリフェノールであるepigallocatechin gallate (EGCG)により抑制された。さらに炎症性サイトカインや活性酸素種産生の減少が認められたことより、血管炎症ならびに小胞体ストレスに抑制作用を有する可能性が示唆された。
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