研究課題/領域番号 |
17K00850
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
飯塚 勝美 岐阜大学, 医学部附属病院, 講師 (40431712)
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研究分担者 |
武田 純 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 非常勤講師 (40270855)
堀川 幸男 岐阜大学, 医学部附属病院, 准教授 (10323370)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ChREBP / Angptl3 / Angptl8 / Fgf-21 / β-hydroxybutyrate / de novo lipoenesis |
研究実績の概要 |
今年度は、ChREBP発現アデノウイルスを経静脈的にマウスに感染させ、ChREBP過剰発現による血中ケトン濃度への影響を検討した。さらに、トリグリセリド(TG)代謝に対する効果をFgf21およびAngptl3とChREBPの関連に注目し明らかにした。ChREBP過剰発現マウスでは、(1)血糖の低下、(2)血遊離脂肪酸増加および血β-hydroxybutyrate (OHBA)低下、(3)de novo lipognesis 増加や脂肪酸酸化 (Acox低下、Acc2増加) 低下による肝TG増加、特にElovl6やScd1遺伝子増加による肝脂肪酸組成の変化(C18:1 n-9増加、C16:0低下)、(4)血TGの低下(特にVLDL-TG)、血HDL-c低下がみられた。さらに血TG低下に一致して、血Fgf21増加、血Angptl3低下が見られた。また血HDLc低下に一致して、血Angptl3の低下が見られた。なお、血Fgf21増加により誘導されるPpargやUcp1遺伝子発現増加が白色脂肪組織で見られた。ChREBP過剰発現により、血OHBA低下が見られた。その理由として、ケトン合成の律速酵素であるHmgcs2 遺伝子は不変であったため、β酸化酵素の低下によるAcetyl CoAの供給が低下したためと考えられた。これは、ChREBPノックアウトマウスで見られるメカニズム(細胞質NAD/NADH比低下、遊離脂肪酸の供給低下)とは異なる。また、血TGの低下にはFgf21の増加、Angptl3の低下による末梢組織での脂肪酸利用の亢進のためと考えられた。以上から、ChREBPは肝TGおよび血TGを逆向きに調節する。血中TG調節には肝からの液性因子(FGF21やAngptl3)が関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に経過していると考えられる。動物実験については、マウスの飼育などでも大きなトラブルがなかった。培養細胞実験については、肝細胞単離のためのコラゲナーゼが発売中止になり、実験の進行が若干遅れたものの、代替品が見つかったため、現在問題点は無事解決している。また、実験設備などについても大きな問題が見られなかった。過去2カ年で、ChREBPの遺伝子欠損マウスおよび過剰発現マウスを用いて、血中ケトン濃度に与える影響を明らかにすることが出来、成果の一部は学会発表および英語論文として発表することが出来た。以上から、概ね順調に計画は進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年にあたり、細かい分子メカニズムを詰める作業を行いながら、引き続き、成果を学会発表および論文発表で公表していく。まず、ケトン食の利点、欠点に焦点を絞り、追加実験を行いながら、論文作成を進めていく。また、肝臓でのケトン産生調節機構を、培養細胞系でCHIPアッセイやリポーターアッセイにより解析しつつ、論文作成を進める予定である。
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