研究課題/領域番号 |
17K00851
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研究機関 | 修文大学 |
研究代表者 |
伊藤 友子 (大矢友子) 修文大学, 健康栄養学部, 准教授 (80329648)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精神疾患 / 翻訳後修飾 / グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素 / カルボニル化合物 |
研究実績の概要 |
精神疾患は依然として発症や病態進展メカニズムにおいて不明な点が多い。遺伝要因と環境要因が複雑に関与することから発症予防は極めて困難であり、早期介入・進展予防が不可欠である。しかし、精神疾患の病態を顕著に示すバイオマーカーは未だ発見されていない。我々は、末梢血由来リンパ芽球様細胞株を利用し、病態を示すマーカーと成り得るタンパク質の翻訳後修飾の解析を進めている。プロテオミクス解析の結果より、疾患群においてグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)の発現量増加とカルボニル修飾の増加を見出した。次にGAPDHの解糖系酵素としてのデヒドロゲナーゼ活性を、健常者群と疾患群の末梢血由来リンパ芽球様細胞で比較した。その結果、疾患群では健常者よりも酵素活性が低い傾向が認められた。検体数を拡大して再現性実験を行ったところ、同様な傾向を示す結果が得られた。検体数を拡大しても、健常者ではデヒドロゲナーゼ活性は検体間のばらつきが小さく一定であったのに対し、統合失調症患者では検体間(患者間)で大きなばらつきが認められた。一方、カルボニル化合物はGAPDHの活性中心であるシステイン残基を選択的に修飾し、GAPDHは解糖系の酵素としての働きを失い別の機能を担う。現在、リンパ芽球様細胞中のカルボニル化合物による修飾の度合いとデヒドロゲナーゼ活性の相関について検討を行っている。さらに、GAPDHの核内移行についてメカニズムの解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
迅速に定量できる評価系を確立したが、活性測定を行う市販キットのロットに不具合が見つかり、原因究明に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに確立した手法を応用して、引き続き、GAPDHの酵素活性とタンパク質発現量について、検体数を拡大し、健常者群と疾患群の末梢血由来リンパ芽球様細胞株で比較検討を行う。さらに、GAPDHの酵素活性、特にデヒドロゲナーゼ活性の変動と病態の関連について臨床情報を基に詳細な解析を行う。また、末梢血由来リンパ芽球様細胞株の可溶性タンパク質においてカルボニル化合物による選択的な修飾を受けていることが分かったため、既に確立している翻訳後修飾タンパク質のプロテオミクス解析手法を応用し、GAPDHの修飾の程度や修飾部位について詳細な解析を行うとともに、デヒドロゲナーゼ活性低下の機序について解明を行う。さらに、核内に移行したGAPDHの検証を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
活性測定を行う市販キットのロットに不具合が見つかり原因究明に時間を要したことと、試薬が調達できなかったため、一時的に研究が滞った。次年度使用研究費の多くは、種々の生化学試薬、分子生物学的試薬、抗体、ELISA測定に使用するプラスチック類器具(96穴プレートを含む)等の消耗品費が占める。
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