研究課題/領域番号 |
17K00851
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研究機関 | 修文大学 |
研究代表者 |
伊藤 友子 (大矢友子) 修文大学, 健康栄養学部, 教授 (80329648)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 精神疾患 / グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素 / カルボニル化合物 / 翻訳後修飾 |
研究実績の概要 |
精神疾患の病態を顕著に示す指標の開発を目指している。今年度は、統合失調症患者4名、健常者3名の末梢血由来リンパ芽球様細胞におけるグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)の酵素活性を測定した。これまでに測定した統合失調症患者54名と健常者17名と合わせて78名の酵素活性の変動を解析した。それらの結果、統合失調症患者の末梢血由来リンパ芽球様細胞におけるGAPDHの酵素活性は、健常者のそれよりも低い傾向が認められた。現在、これら臨床検体を用いてGAPDHのタンパク質発現量と酵素活性の関連を解析しているとともに、GAPDHのカルボニル化合物による翻訳後修飾形式を解析している。GAPDHは神経細胞死に先んじて高発現し、核内に移行してアポトーシスを促進することが示唆されており、GAPDHの核内移行についてのメカニズム解析を進めている。また、重症摂食障害患者において、神経発達症に関連する7遺伝子のゲノムコピー数多型(copy number variant: CNV)が同定された。それらのCNVではゲノム領域が1コピー以下(欠失)になっており、神経発達症に関わる遺伝子の発現量変化に影響を及ぼすことで、機能異常を介して精神疾患の発症に寄与すると考えられる。 一方、制御が期待できる食品因子として大豆に含まれるイソフラボン(ダイゼインおよびゲニステイン)に着目した。銅キレーターであるクプリゾン投与によるマウス海馬のミエリン脱落(統合失調症・多発性硬化症のモデル)に対してゲニステインがミエリン関連遺伝子の発現を増加させることにより抑制作用を示すことが報告されている。現在、イソフラボンによるカルボニル化合物に対するタンパク質修飾制御効果について解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
統合失調症患者を含む78名の末梢血由来リンパ芽球様細胞におけるGAPDH酵素活性を迅速に測定できるようになった。測定の結果、統合失調症患者で酵素活性低下の傾向を認めた。その作用機序として、カルボニル化合物による修飾が重要であることを明らかにしつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果を基に、GAPDHの酵素活性低下と病態進展との関連を明らかにする。また、カルボニル化合物によるGAPDHの修飾機構について更に詳細な解析を進める。GAPDHの核内移行についてのメカニズム解析も引き続き行う。食品因子による制御機構について、カルボニル化合物との反応機構を中心に詳細な解析を進める。コロナ禍のため実験や打ち合わせなどが遅れていたが、タンパク質発現および修飾形式を解析する装置を導入したこともあり、今後は迅速に解析できると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
酵素活性測定について測定条件を工夫したことで、それらにかかる消耗品費を抑えることができたため。 次年度使用研究費の多くは、種々の生化学試薬、分子生物学的試薬、抗体、ELISA測定に使用するプラスチック類器具(96穴プレートを含む)等の消耗品費が占める。
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