4-deoxy-L-erythro-5-hexoseulose uronic acid(DEH)および2-keto-3-deoxy-D-gluconic acid(KDG)は,褐藻細胞間粘質多糖のアルギン酸からリアーゼやレダクターゼの作用によって生じる希少糖である.本研究では,これらアルギン酸デオキシ糖について効率の良い製造方法の開発と生理機能解析に関する研究を目的としている.令和元年度は,連携研究者と共にDEHの大量調製を行い,Caenorhabditis elegans遺伝子改変株を用いて生理機能解析に関する研究に取り組んだ. 同調培養したC. elegans遺伝子改変株・AM141(Q40::YFP)を用いて,線虫の寿命に及ぼすDEHの作用を評価した.その結果,特定の濃度下でDEH処理群は,コントロール群と比較してAM141株の平均寿命を約17%有意に延長した.次にDEH処理群について,蛍光実体顕微鏡観察を行った結果,線虫の筋肉において加齢のマーカーでもあるポリグルタミン凝集体の形成が著しく抑制されていることが分かった.AM141株は,神経変異性疾患ハンチントン病のモデルとされている.この結果から,DEHは,アンチエイジング活性に加え神経変異性疾患(ポリグルタミン病)に対して病態の進行を抑制する生理機能を持つ可能性が示唆された.
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