43人の心不全患者を対象に、甘味、塩味、苦み、酸味の4種類の味覚感度を検証した。対象患者のうち、甘味、塩味、苦み、酸味の味覚感度を低下した症例はそれぞれ、83.7%、67.4%、69.8%、81.4%であった。半数近くの患者(41.9%)で、4種の味覚すべてが低下していた。ポリファーマシー(8種類以上の内服が処方されている患者)を合併した心不全患者は、そうでない患者と比べ有意に苦みの感度の低下、ならびに4種すべての味覚感度が低下していた。また、ポリファーマシーは摂取エネルギーの低下とも関連がみられた。多変量解析による分析の結果、ポリファーマシーは4種すべての味覚感度の低下に独立して関連がみられた。また、味覚感度低下が複数になるほど摂取エネルギーの低下と関連がみられた。以上の結果より、ポリファーマシーは複数の味覚感度低下に関与し、味覚感度低下に伴いエネルギー摂取の低下に関与する可能性が示唆された。したがって、心不全患者におけるポリファーマシーは低栄養のリスクとなる可能性が考えられ、ポリファーマシーへの介入は心不全患者の新たな栄養介入の戦略として考えられた。
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