研究課題/領域番号 |
17K00856
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
徳田 信子 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70227578)
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研究分担者 |
大和田 祐二 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20292211)
山本 由似 東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (80635087)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脂肪酸 / 肥満 / 消化管 |
研究実績の概要 |
多価不飽和脂肪酸と肥満:マウスに高脂肪食を摂取させ、肥満マウスモデルを作成したところ、n-3系脂肪酸に高い親和性を示す脳型脂肪酸結合蛋白質(FABP7)が、摂食と体重を制御している視床下部の弓状核グリア細胞に高い発現を示した。そして、FABP7遺伝子欠損マウスでは、摂食抑制ホルモンであるレプチンに対する応答性が高まり高脂肪食に対する体重増加が抑えられた(Yasumoto et al, Mol Neurobiol, in press)。また、肥満が末梢のB細胞/T細胞の比を増加させる可能性が示されたが、野生型マウスとFABP7遺伝子欠損マウスの間には有意の差が見られなかった(徳田ら、第123回日本解剖学会総会)。 多価不飽和脂肪酸調整食が末梢の免疫細胞に与える影響:成長期の野生型マウスおよびFABP7遺伝子欠損マウスにn-3系脂肪酸欠損食を摂取させたところ、末梢の免疫細胞数に影響を与える可能性が示された。一方で、B細胞/T細胞比に影響を与える可能性は低いと考えられた。次年度以降も解析を継続する予定である。また、FABP7はマクロファージの抗炎症性機能分化において細胞内代謝に影響を与えており(宮崎ら、第46回日本免疫学会学術集会)、炎症を惹起した状態では免疫細胞の割合を制御している可能性が考えられた。 心臓型FABP(FABP3)の消化管での発現:肥満などのメタボリックシンドロームと関連していると言われるFABP3の消化管での発現を検討し、食道~結腸では、胃の壁細胞に発現が見られることを明らかにした。他の部位の発現についても現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪酸調整食を与えたマウスの飼育を行い、すでに基礎データを取得できている。また、n-3系脂肪酸に高い親和性を示す脳型脂肪酸結合蛋白質(FABP7)が肥満や免疫細胞に与える影響を検討し、一部のデータについてはすでに学会や論文で発表を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
多価不飽和脂肪酸調整食が免疫細胞に与える影響:成長期のマウスでは大きな影響が見られなかったことから、胎児期からの影響を検討する。 多価不飽和脂肪酸と腸内細菌叢の解析:ターゲットとなる遺伝子欠損マウスについて腸内細菌叢の割合をPCR によって解析する。 炎症性腸疾患モデルの作成と評価:1.5%デキストラン硫酸(DSS)を飲水として投与し、腸炎を惹起させる。炎症の程度は、定法に従って体重変化・臨床症状・組織像で評価する。 また、n数が不十分な実験について、再検討を行う。次年度より所属施設が変わるため、条件検討を十分に行い、施設間の差を考慮しながら研究を進めてゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は検体の採取が順調に進み、予定よりも検体採取や試薬の購入に必要な金額が低く抑えられた。また、試料の解析に必要なソフトウェアも予定より安く使用することができた。生じた次年度使用額は、元々予定していた交付金と併せて、動物の飼育や細胞および腸内細菌叢の解析に使用する予定である。
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