研究課題/領域番号 |
17K00856
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
徳田 信子 獨協医科大学, 医学部, 教授 (70227578)
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研究分担者 |
大和田 祐二 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20292211)
山本 由似 東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (80635087)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脂肪酸 / 炎症 / 組織再生 / 腸 / 微小環境 |
研究実績の概要 |
小腸の粘膜下には多数の免疫細胞が存在していることが知られている。今回、ラットを用い、腸組織を経て再循環するリンパ球の遊走経路を解析したところ、小腸のパイエル板で血管ーリンパ管の移行が起こることが明らかになった。再循環したTリンパ球はパイエル板の濾胞間にある樹状細胞と一旦細胞集塊を形成し、その後リンパ管へ入っていく。しかし、抗原と反応した場合はリンパ管に入らず、その場で活性化T細胞に分化した(上田他、第124回日本解剖学会総会)。我々はすでに、パイエル板の濾胞間にある線維芽細胞や炎症時に新たに生じる濾胞の線維芽細胞に、n-3系脂肪酸に対して高い親和性を示す脳型脂肪酸結合蛋白質(FABP7)が発現することや、免疫組織の樹状細胞に表皮型脂肪酸結合蛋白質(FABP5)が発現することを明らかにしている。これらの結果から、腸疾患の際の炎症細胞の集積には、炎症細胞の微小環境を構成する細胞において、脂肪酸シャペロンを介した脂質の関与があることが示唆された。 また、我々は、FABP7遺伝子欠損マウスを用い、腸の炎症モデルにおいて炎症反応の遅延が見られることをすでに明らかにしている。今回、脱髄疾患モデルでも同様に臨床スコアが変化することを見い出し、組織の傷害と修復プロセスに対する脂肪酸シャペロンの関与を示した(宮崎他、124回日本解剖学会総会)。 さらに、今回、これらFABPを介した細胞内脂質環境の変化がエピゲノムに影響を及ぼすことを明らかにした。その機序や疾患発症への関与が注目を集めている(Yamamoto et al., J Neurosci, 2018、 山本他・第124回日本解剖学会総会、大和田他・第91回日本生化学会大会、香川他・第59回日本組織細胞化学会総会、いずれも招待講演)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・消化管の微小環境と炎症時の変化について、データを取得できている。また、着目しているタンパク質と肥満の関係および消化器での発現について、おおむね順調にデータを採取できている。 ・ヒトの消化管の炎症に対する研究内容の応用について、消化器内科のグループと共同研究を行う計画が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
・本年は、着目しているタンパク質を欠損させたマウスを用いて炎症モデルを作成し、肥満・脂肪酸・炎症の関係を明らかにする。また、ヒト消化管炎症性疾患に対する応用を検討する。 ・申請当時は着目していなかった分子が消化器の炎症に関与していることが示唆されたため、その分子を欠損したマウスについても検討を加えることを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、前年度までに採取した標本の解析を主に行ったことと、試薬の使用量を予定よりカットできたことで次年度使用額が生じた。次年度は最終年として総合的に解析し発表を行うため、多種の試薬の購入や成果発表に研究費を投じる。
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