研究課題/領域番号 |
17K00857
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
首藤 恵泉 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 講師 (10512121)
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研究分担者 |
酒井 徹 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (40274196)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大豆イソフラボン / 癌 |
研究実績の概要 |
T細胞の活性化に伴う慢性炎症は、メタボリックシンドローム発症の主要な成因であると同時に、癌遺伝子の活性化やゲノム不安定性の誘導を通じ、癌の発症、進展に寄与している。癌遺伝子が引き起こす作用は、細胞内代謝の変化(ワールブルグ効果:癌代謝)と免疫抑制作用による癌細胞の保護(癌免疫)に集約される。これまで、大豆イソフラボンがメタボリックシンドロームの基盤病態である慢性炎症を抑制し、免疫細胞、代謝病態へ作用することを検討してきたが、本研究は、大豆イソフラボンの癌代謝及び癌免疫への作用を検証し、副作用が少ない食品機能成分の癌治療への参画といった創薬的な新しい可能性を検証することを目的とする。 従来の抗癌剤を使用しても臨床画像では指摘できないレベルで治療抵抗性の癌細胞が残存する。この細胞は、幹細胞の性格を有することから癌幹細胞として知られており、癌組織の数%にしか満たないが、癌組織の司令塔として細胞内代謝及び免疫系の変化を主導し多くの細胞に分化して癌組織を保護する。特に、血管内皮細胞に分化し腫瘍血管を誘導し、免疫抑制細胞に分化して細胞障害性T細胞による攻撃から癌細胞を保護することは、癌の治療抵抗性および転移の本態とも考えられている。そこで、癌幹細胞検証システムと癌モデルマウスを用いて、大豆イソフラボンの癌幹細胞への効果を検討する。 今年度は、これまで得られた癌幹細胞における大豆イソフラボンの効果が、どのようなメカニズムを介しているのかを検討するため、遺伝子発現及びタンパクレベルで探索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌治療において癌幹細胞を制御することは最優先の課題である。大豆イソフラボンが、すでに知られている抗癌幹細胞薬に匹敵するほどの癌幹細胞抑制効果を発揮するか検討した。大豆イソフラボンの癌幹細胞への効果を解析するために3次元培養スフェロイド法を用いるとともに、遺伝発現およびタンパクをArray kitを用い網羅的に探索し、どのようなメカニズムを介するか検討した。さらに、in vitroで得られた結果をもとに、癌発症モデルマウスを用いてin vivoで大豆イソフラボンの癌免疫への効果を評価するために、癌細胞移入による癌発症モデルマウスの作成を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、in vitroで得られた結果をもとに、様々なモデルマウスを用いてin vivoで大豆イソフラボン癌免疫への効果を評価する。まずは、癌細胞移植マウスにおける大豆イソフラボンの効果を解析する。蛍光タンパクで標識した癌細胞をマウスに移植し、大豆イソフラボンを経口投与することによる腫瘍への影響を、非侵襲的なin vivo蛍光イメージングシステムにより経時的に評価する。さらに、自然発症癌マウスを用いて、大豆イソフラボン投与による腫瘍巣に対する効果(腫瘍サイズ、組織像)を検討する。また、これらのマウスにおける癌免疫、癌代謝の状態の変化を評価する。癌免疫に関しては免疫細胞の量的な評価に加え、細胞障害性T細胞を単離し癌細胞への障害作用をex vivoで検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度までは、学内の総合研究支援センターの機器を有効活用することにより、計画していたin vitroによる癌幹細胞の評価を予算内で行うことができた。また、安定した癌発症モデルマウスの作成条件を得ることができた。 次年度は、癌発症モデルマウスを用いて大豆イソフラボン投与による腫瘍巣に対する効果について検討する。また、これらのマウスにおける癌免疫、癌代謝の変化を評価する。癌免疫に関しては免疫細胞の量的な評価に加え、細胞障害性T細胞を単離し癌細胞への障害作用をex vivoで検討する。こにより、大豆イソフラボンの癌幹細胞への作用機序、癌代謝及び癌免疫への作用を検証し、他の抗癌剤との併用をin vivoを含めて検討することを通じて、副作用が少ない食品機能成分の癌治療への参画といった創薬的な新しい可能性を検証することに使用する。
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