研究課題
黄色ブドウ球菌(No. 29株およびNo. 26a株)に8種の化学物質を暴露して37度で培養することにより、SEA遺伝子、SEAタンパク質の発現およびバイオフィルム形成に及ぼす影響を調べた。さらに、より生体内に近い条件下で病原性細菌の生体内における毒性を評価するために、黄色ブドウ球菌を血清(FBS)中で培養し、各種化学物質が病原因子関連遺伝子の発現およびβ-hemolysin活性(溶血活性)に及ぼす影響について解析した。BHI培地中における黄色ブドウ球菌の病原因子の発現に及ぼす各種化学物質の影響を検討したところ、試験に供した全ての化学物質において、SEA遺伝子の発現量が増加する傾向が認められた。また、No. 26a株においては、アクリルアミドおよびN-dimethyl-nitrosoamineの暴露により、黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成量が有意に増加した。さらに、黄色ブドウ球菌と各種化学物質をFBS中で培養し、病原因子関連遺伝子の発現量を測定した。その結果、No. 26a株においては、アクリルアミドの暴露により、黄色ブドウ球菌の病原因子を調節するsmall RNAであるRNAIIIおよびバイオフィルム関連遺伝子のicaAの発現量が有意に増加し、ヘテロサイクリックアミンの一種であるPhIPまたはMeIQxの暴露により、SEA産生量が増加した。また、FBS中でbisphenol AおよびPhIPを暴露したNo. 26a株の一部のコロニーには、溶血活性が認められた。これらの結果より、培地条件下と生体内では、黄色ブドウ球菌の病原因子の発現調節機構が異なり、菌株の種類によっても化学物質への応答機構が異なることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
現在までに、黄色ブドウ球菌と化学物質を同時暴露することにより、SEA遺伝子、SEAタンパク質の発現およびバイオフィルム形成に及ぼす影響が得られており、おおむね順調に進展している。
本年度は、ICR系雄マウスにSEAおよび化学物質を同時投与し、腸内細菌叢の変動について、次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析を用いて評価する。さらに、化学物質が誘発する突然変異についてエームス試験で得られたコロニーを単離してDNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いて全ゲノムシーケンスを行い、複合暴露により誘発する突然変異を直接的に検出する
腸内細菌に関連する実験について、2019年度に実施することにしたことから、次年度使用額が生じた。
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Molecules
巻: 23(5) ページ: 1125
10.3390/molecules23051125