【方法】黄色ブドウ球菌の毒素 (SEA) 産生量に及ぼす化学物質の影響を明らかにするために、黄色ブドウ球菌SEA産生株にアクリルアミド (AA) を暴露して37℃で培養し、SEA産生量の変動をWestern blot解析を用いて調べた。また、菌株間で、AAの暴露がSEA産生量に及ぼす影響が異なる可能性を配慮して、ヒト由来SEA産生株10菌株について、Western blot解析を用いて、AA暴露時のSEA産生量を比較した。また、化学物質の変異原性に及ぼす黄色ブドウ球菌菌体外成分の影響を明らかにするために、Salmonella typhimurium TA 98株およびTA 100株 (±S9mix) によるエームス試験を用いて、化学物質の変異原性に及ぼす黄色ブドウ球菌の培養上清 (3 kDa以上および以下) の影響について検討した。 【結果・考察】黄色ブドウ球菌SEA産生株にAAを暴露した後、SEA産生量の変動を調べたところ、AA添加により、SEA産生量が有意に増加した。さらに、ヒト由来SEA産生株10菌株を用いて、同様にAA添加によるSEA産生量を調べたところ、全ての菌株でSEA産生量の増加が認められたが、菌株ごとに増加の程度は異なっており、AA未添加時の菌株のSEA産生量との相関は認められなかった。これらの結果より、菌株の種類によっても化学物質への応答機構が異なる可能性が示唆された。また、化学物質の変異原性に及ぼす黄色ブドウ球菌の培養上清の影響について調べた。その結果、TA 100株の-S9mix条件下において、培養上清の3 kDa以上の画分に変異原性は見られなかったが、アジ化ナトリウム (AZS) との複合暴露により、復帰変異コロニー数が増加したことから、黄色ブドウ球菌の培養上清は、AZSの変異原性を増強したと考えられた。
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