研究課題/領域番号 |
17K00862
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
島村 裕子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (60452025)
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研究分担者 |
増田 修一 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (40336657)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 黄色ブドウ球菌 / ブドウ球菌エンテロトキシンA / ポリフェノール / STAT3 |
研究実績の概要 |
【方法】SEAとカテキン類の相互作用に及ぼすpHおよびタンパク質の影響についてWestern Blot解析を用いて検討した。SEAが誘導する遺伝子発現に対するEGCGの影響を明らかにするために、マイクロアレイ解析を行った後、JAK/STAT系関連遺伝子の発現をリアルタイムRT-PCRで解析した。また、EGCGがSEA誘導性STAT3の活性化に及ぼす影響をWestern blotで解析した。さらに、SEAのgp130分子への結合に対するポリフェノールの影響について、Western blot解析およびサーマルシフトアッセイを用いて検討した。 【結果】各種pH (pH4.0~8.0) 条件下および血清アルブミンの共存下においても、SEAとEGCGの相互作用が認められたことから、SEAとEGCGは、生体内においても、その相互作用を維持できる可能性が示唆された。リアルタイムRT-PCRおよびマイクロアレイ解析により、マウス脾臓細胞へのSEAの暴露は、Th1細胞の応答を顕著に誘導した。それに対して、EGCGは、SEAにより発現が誘導された炎症のメディエーターやネクロトーシス関連炎症遺伝子の発現量をダウンレギュレートさせた。マウス脾臓細胞にSEAを暴露して、JAK/STAT系関連遺伝子の発現をリアルタイムRT-PCRで解析したところ、IL-6およびJAK1の発現量は減少したが、IFN-γ、IL-27、JAK2、STAT1、STAT3およびその下流シグナル遺伝子であるBNIP3およびSOCS1の発現量は増加した。また、EGCGは、SEAが誘導するSTAT3 (Tyr705) のリン酸化を有意に抑制した。サーマルシフトアッセイにより、EGCGとSEAが相互作用することで、gp130受容体とSEAとの結合が阻害され、STAT3のリン酸化が抑制されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EGCGを添加したマウス脾臓細胞のRNAが分解しやすく、マイクロアレイ解析が困難であったことから、RNA抽出・精製条件を最適化した。今後、最適化したRNA抽出・精製法を用いて、SEA誘導性の炎症のメディエーターやネクロトーシス関連炎症遺伝子を制御するmiRNAの発現について、miRNAマイクロアレイおよびリアルタイムPCRを用いて網羅的に解析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、ポリフェノールによるSEAのスーパー抗原活性阻害能およびgp130分子への結合阻害能およびその作用機序について明らかにするために、主に以下の3つについて研究を進めていく予定である。 ・SEA誘導性mRNAを制御するmiRNAを明らかにするとともに、それらmiRNAに対するカテキン類の影響について検討する。 ・カテキン類によるSEA誘導性STAT3のリン酸化抑制およびSEAのgp130分子への結合に対する阻害のメカニズムについて検討する。 ・インスリン抵抗性に伴う腸内細菌叢の変化およびその代謝プロファイルに及ぼすポリフェノールの影響について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、ポリフェノール類とSEAが相互作用することにより、STAT3の活性化が抑制されることを想定していた。しかしながら、ポリフェノール類は、SEAが誘導したSTAT3の活性化を抑制している可能性を見出したことから、SEA誘導性mRNAを制御するmiRNAの発現解析およびそれらmiRNAに対するポリフェノール類の影響について検討する計画を追加した。そのため、当初の計画であったin vivo試験を次年度に変更し、購入予定であった試薬や機器の内訳を変更したことから、次年度使用額が生じた。 本年度は、インスリン抵抗性に伴う腸内細菌叢の変化およびその代謝プロファイルに及ぼすポリフェノール類の影響について検討するため、研究費を動物実験に使用する消耗品費等に使用するとともに、研究費の一部は、miRNAマイクロアレイの消耗品費等に使用する予定である。
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