研究実績の概要 |
申請者は尿中のビタミン排泄量には差異が認められない成人においても,尿中への分岐鎖2-オキソ酸総量が高い層が存在し,適正なビタミン補充により低下したことを報告した(Shibata, Sakamoto, JNSV, 62, 220-228, 2016). この現象が乳幼児においても認められるのか否かを調べる計画であったが,乳幼児の採尿が困難であったため,下記の内容に変更した. ① 栄養失調時のモデル実験として,糖尿病ラットの尿中2-オキソ酸排泄量パターンの特徴を解析した.特徴的なことは,筋肉で代謝される分岐鎖アミノ酸由来の2-オキソ酸排泄量が,正常ラットの対照群と比べて,顕著に高くなっていた.つまり,糖尿病時では分岐鎖アミノ酸の異化代謝の抑制が観察された(Shibata, JNSV, 64, 292-295, 2018).② すでに終了していた未整理の若年女性を対象としたビタミン補充実験の解析を行った結果,既報(Shibata, Sakamoto, JNSV, 62, 220-228, 2016)の再現性が確認できた.③ 若年女性を対象として,2-オキソ酸排泄量の高い層にビタミン補充後,投与中止後の変動を調べたところ,補充すると速やかに低下すること,補充を中断すると上昇することが分かった(Hirai et al., JNSV, 67, 63-67, 2021).④筋肉細胞を0.1mmol/LのNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)を添加した条件で培養すると,分岐鎖アミノ酸アミノ基転移酵素(BCAT)1のmRNAの発現量が,非添加時に比して有意に増加した.一方,BCAT2のmRNA量には差異は認められなかった.BCKDHa(分岐鎖2-オキソ酸脱水素酵素a)のmRNA量,BCKDK(分岐鎖2-オキソ酸脱水素酵素キナーゼ)のmRNA発現量には差異は認められなかった.
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