研究課題/領域番号 |
17K00866
|
研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
和田 小依里 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (60420709)
|
研究分担者 |
佐藤 健司 京都大学, 農学研究科, 教授 (00202094)
内藤 裕二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00305575)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 腸内細菌叢 / 発酵食品 |
研究実績の概要 |
腸内細菌叢と食事,疾患は密接な関係にある。近年,炎症性腸疾患など様々な疾患に腸内細菌叢が関与していることが示唆されている。我々は先行研究で,マウスにおける大腸炎抑制効果を持つ機能性ペプチドであるピログルタミルロイシン(pEL),ピログルタミルアスパラギニルイソロイシン,ピログルタミルチロシンを同定した。そこで、食品加工の技術を用いて米を低温で発酵させることによりピログルタミルペプチドを多く含む低温発酵物を開発した。この低温発酵物は伝統的な甘酒や日本酒の製法に準じて作成しており、食経験が長く、ヒトが摂取することが可能である。まず、デキストラン硫酸ナトリウム誘発性腸炎モデルマウスを用い、低温発酵物、甘酒、日本酒をそれぞれ7日間経口摂取させた。腸炎誘発群と比較して低温発酵物投与群で腸管長の短縮抑制傾向がみられ(p = 0.069),腸炎スコアが有意に低値であった(p = 0.040)。一方、甘酒群,日本酒群では腸炎抑制効果はみられなかった。そこで、この低温発酵物をヒト試験に用いた。健常な大学生を対象とし、サンプル(低温発酵物飲料,プラセボ飲料)摂取期間,washout期間それぞれ4週間のクロスオーバー試験を行った。摂取前後の腸内細菌叢組成,15項目の消化器症状の指標であるGastrointestinal Symptom Rating Scale(GSRS)の変化を評価した。低温発酵物投与群においてBacteroides fragilisが有意に増加したが(p = 0.001)、プラセボ投与群では変化がなかった。GSRSにおいては,消化不良スコア,下痢スコアに改善傾向がみられた(p = 0.090,0.096)。新規低温発酵物の腸内細菌叢改善効果および消化器症状改善作用が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では4つの研究計画を立て29年度より3年間で完遂する計画であるが、初年度である29年度に①機能性ピログルタミルペプチドを豊富に含む米発酵物サンプルの作成方法の確立および④米発酵物サンプルのヒト試験の予備試験を行うことができたためおおむね順調に進展しているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
2 型糖尿病および非アルコール性脂肪性肝疾患患者と健常者の発酵食品摂取量および腸内細菌叢の比較を行う。外来通院中の2 型糖尿病患者および非アルコール性脂肪性肝疾患患者の中で同意を得られたものに対し、食事調査および便腸内細菌叢解析を行う。各疾患20 名ずつを予定している。また、健常ボランティア20 名に対しても同様の調査を依頼する。簡易型自記式食事歴法質問票(brief-type self-administered diet history questionnaire BDHQ)を用い習慣的な発酵食品摂取量(味噌、しょうゆ、納豆、日本酒等)を算出する。また、腸内細菌叢解析も行うことにより、腸内細菌叢、疾患、食事・栄養素摂取量の相関について解析する。 さらに培養細胞、実験動物を用いてピログルタミルペプチドがサイトカインなどに及ぼす影響を調べ、分子レベルでの作用機序を解明する
|