研究課題/領域番号 |
17K00867
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
神谷 重樹 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 教授 (60379089)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 機能性食品 / 歯周病 / 未利用食品資源 / 抗菌作用 |
研究実績の概要 |
本年度は我々が歯周病原細菌に対する抗菌活性を見出した物質Artepillin(昨年度報告、X), プルニンラウリン酸エステル(昨年度報告、Y)とその類縁体についてさらに試験管レベルで解析を行った。まずアルテピリンが含まれるプロポリスに存在するdrupaninとbaccharinについてP. gingivalisおよびA. actinomycetemcomitansについて調べた濃度ではartepiliinのみが両者に対して増殖阻害活性を示したが、drupaninとbaccharinはP. gingivalisにはほとんど増殖阻害活性を示さなかった。またバイオフィルム形成については、artepillinとbaccharinは両者に対して阻害活性を示したが、drupaninはA. actinomycetemcomitansのみに阻害活性を示した。また歯肉上皮細胞に対する細胞毒性を調べたところ、3つの物質とも高濃度では細胞生存率が半分に低下した。 一方、マウスを用いた歯周病原細菌感染動物実験モデルには大量の物質が必要なため、少量の試薬量でも可能な評価系を構築したいと考え、歯周病の病態を再現する目的で、骨芽細胞と破骨細胞が存在し、カルシウムの貯蔵である硬骨魚類のウロコに歯周病原細菌を作用させて、破骨細胞優位な骨吸収の状況が再現できるかを検討した。メダカから採取したウロコにP. gingivalisあるいはA. actinomycetemcomitansを作用して96時間後にウロコの細胞から細胞抽出液を回収し、骨芽細胞マーカーであるアルカリホスファターゼ(ALP)活性と破骨細胞のマーカーである酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)活性を指標に歯周病原細菌作用の有無でTRAP/ALPを比べたが大きな変化は見られず、評価系は構築できなかった。 また、それぞれの物質について大量合成を検討したが、プルニンラウリン酸エステルについてmgレベレで86%の精製度で得られることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスを用いた歯周病感染動物モデルでの評価では多くの化合物を検討できないため、簡便な方法として硬骨魚類を使った骨吸収評価系を検討したが上手くいかなかった。しかし、これまで見出した物質の類縁体についても増殖阻害やバイオフィルム形成阻害、細胞毒性などのデータが得られた。また並行して大量合成について検討したところ、細胞毒性の低かったプルニンラウリン酸エステルが高い精製度でmgレベルで合成できたため、マウスを用いた歯周病の抑制効果の実験への目処が立った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果より、精製度の高い大量合成が可能になり、かつ細胞毒性が調べた濃度では認められなかったプルニンラウリン酸エステルについてマウスを用いた動物実験を行い、歯周病の抑制効果があるかどうかを検討する予定である。また歯周病原細菌に対する抗菌活性の作用機序についても調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に以下の理由で生じた次年度使用額が生じた分をほぼそのまま積み残したためである。 (国際学会に情報収集等のために参加する予定であったが、申し込みが前年度であったため、本研究費で執行できず他の経費で執行した。また一部の実験 については機器等の問題で進捗しなかった。)次年度使用額については、次年度の学会参加旅費および物品費として試薬、消耗費の購入に利用する予定である。
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