研究課題
進行した慢性腎臓病(CKD)やCKDのために透析導入となった患者では血管の異所性石灰化が進行し、生命予後が悪化する。この血管異所性石灰化には高リン血症が大きくかかわることから、食事からのリン摂取の制限が重要となっている。さらに近年には、腎機能が正常であっても血清リン濃度が高いほど心血管疾患のリスクは上昇することも明らかになってきた。このような状況から臨床栄養においては新たなリンプログラムの構築が必要となっており、臨床栄養学に適応できる分子栄養学的な理論の確立が望まれている。本研究では1)骨と血管の臓器連関から異所性石灰化の分子基盤を明らかにするだけでなく、2) 骨・血管連関リン調節分子が血管平滑筋細胞に及ぼす影響を明らかにする事で、3)異所性石灰化を予防するリン栄養療法の開発を目指す。特に申請者が研究を進めている新規リン調節因子SLC37A2についてin vitro, in vivoの両面から検討を行う。in vitroの系では、破骨細胞様細胞と正常ヒト大動脈血管平滑筋細胞(AoSMC)を用いて異所性石灰化の検討を行う。in vivoとして血管石灰化を生じさせたCKDモデルマウスを用いて、食餌との関連を明らかにする。in vitroにおいて血管石灰化に伴いSLC37A2遺伝子・たんぱく質の発現量が増加した。またCKDモデルラットの大動脈におけるSLC37A2遺伝子発現が骨芽細胞マーカー遺伝子発現と相関していた。さらに、SLC37A2はCKDラットの血管石灰化領域で発現が観察された。In vitroおよびin vivo解析において、SLC37A2が血管石灰化に関与する可能性をもつ新たな分子の1つであることを示唆した。今後、血管石灰化におけるSLC37A2の機能を明らかにすることで、石灰化メカニズムの解明が期待される。
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