研究課題/領域番号 |
17K00870
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
木村 治 北海道医療大学, 薬学部, 講師 (10418882)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高齢者 / 頭髪 / 安定同位体比 / 中心静脈栄養 |
研究実績の概要 |
健常者と中心静脈栄養法(Total Parenteral Nutrition : TPN)により長期間栄養管理を受けている高齢者から、頭髪採取を行い、頭髪中の安定同位体比(δ13C値とδ15N値)と微量元素の分析を行った。さらに投与されていたTPN製剤中の安定同位体比の分析も行った。65歳以上の高齢者(n=90)の頭髪中のδ13C値とδ15N値は、それぞれ-19.6 ± 0.7‰ と 9.0 ± 0.7‰であり、以前に報告した健常者の頭髪中安定同位体比とほぼ等しい値であった。TPNで栄養管理されていた高齢者(n=26)の頭髪中のδ13C値とδ15N値は、それぞれ-14.7 ± 3.1‰と4.5 ± 3.0‰であり、65歳以上の高齢者(対象者群)と比べてそれぞれ高値と低値を示した。また投与されていた5種類のTPN製剤のδ13C値とδ15N値は近似しており、それぞれ-12.1 ± 0.4‰ と -3.5 ± 0.2‰であった。これらの結果から、TPN製剤が含有するアミノ酸やブドウ糖は、C4植物由来の原料を使用して製造されていると考えられる。 TPNで栄養管理されていた高齢者の頭髪中のδ13C値とδ15N値の間には有意な負の相関が認められ、TPN投与期間が長期になるにつれてδ13C値は増加し、δ15N値は減少し、その後、両値はほぼ10ヶ月間でプラトーになった。頭髪中のδ13C値とδ15N値を分析することでTPNによる栄養管理期間を推定することが可能と考えられる。 10ヶ月間以上TPNで栄養管理されていた高齢者の頭髪中の必須元素、Se(セレン)、Mo(モリブデン)、Cu(銅)の濃度は対象者群と比べて有意に低値を示した。頭髪中の微量元素を分析することで、患者の微量元素の欠乏や過剰を把握することが可能と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力者や医療施設の協力により、健常者およびTPNで栄養管理を受けている高齢者の頭髪採集は順調に進んでいる。頭髪中の安定同位体比の分析も順調に進み、健常者(高齢者)は90例を越えている。TPNで長期間栄養管理を受けている高齢者の頭髪中の微量元素については、研究進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
高齢者やTPNで長期間栄養管理を受けている高齢者の頭髪の頭髪採取を継続して行う。長期間TPNで栄養管理されている患者の頭髪中の微量元素を分析することでTPN投与期間の予測、微量元素の欠乏や過剰など栄養状態の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)購入予定していたHPLC-UV検出器を購入しなかったため。海外出張を検討していたが、中止となったため。 (使用目的)購入を見合わせたのHPLC-UV検出器の購入を予定している。次年度の予算の大部分はこれらの毛髪試料中の安定同位体比と微量元素の分析のために使用する。研究遂行上、至急安定同位体や微量元素の分析結果を必要とする場合にはその分析を外部機関へ依頼する。その場合の費用は次年度への繰越金を充当する。
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