ω3脂肪酸(イコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸)が豊富な魚油を摂取すると、褐色脂肪が活性化されエネルギー消費が増えて肥満低減に効果があるとのマウス知見をヒトで検証するために、健常若年男性を被験者として褐色脂肪活性をFDG-PET/CT法で測定しω3脂肪酸摂取に伴うエネルギー消費の応答について実験を行った。 1)ω3脂肪酸を多く含む高脂肪食、単純な高脂肪食を別々な日に摂取し、呼気分析法でエネルギー消費量を2時間測定した。同時にグルコース、インスリン、遊離脂肪酸などの血中成分の測定も行った。2)ω3脂肪酸サプリメントを単回摂取した後、エネルギー消費量を2時間測定した。結果1)2)のいずれも、褐色脂肪低活性者に比べて高活性者の方が摂取後のエネルギー消費量が高い傾向が認められたが、有意な差には至らなかった。また、血中成分についても有意な差はなかった。高糖質食においては、褐色脂肪高活性者の方が有意に食後エネルギー消費量が高くなることが報告されており、本研究の試験食は糖質、たんぱく質を極力控えた高脂肪食とした。消化・吸収は糖質、たんぱく質、脂質の順に時間がかかるため、ω3脂肪酸が消化管内のレセプター等を介して作用するならば、脂肪の消化・吸収に要する時間を考慮した検討が必要であった。 3)褐色脂肪低活性者を対象にω3脂肪酸サプリメントを6週間継続摂取すると、摂取後の寒冷誘導熱産生が有意に上昇し、除脂肪量の増加も見られた。寒冷誘導熱産生は褐色脂肪活性の指標なので、この結果はω3脂肪酸を一定量定期的に摂取することで褐色脂肪が活性化しうることを示している。 総括として、マウスと同様にヒトでもω3脂肪酸が褐色脂肪を活性化・増量し、それが肥満や代謝異常改善に寄与する可能性が高いと思われる。尚、3)の対照試験や、肥満・メタボ被験者での検討も予定していたが、新型コロナ感染症の影響により実施できなかった。
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