研究課題
生活習慣病ともいわれるがんや循環器系疾患および老化の原因の一つとして、活性酸素による生体内障害であることが知られている。ゴマに含まれるゴマリグナン類はがんの発生要因の一つである活性酸素を除去する作用(抗酸化作用)を有する生理活性物質として注目されているが、抗がん作用(細胞増殖抑制作用)の機能解明は不明なままである。がん感受性細胞にK562細胞、ドキソルビシン耐性がん細胞にK562/DOX細胞を用いてゴマリグナン類の細胞増殖抑制作用の機能解明を行う。ゴマリグナン類であるセサミン及びセサモール1 μg/mL~10 μg/mLをK562細胞或いはK562/DOX細胞に添加し72時間培養後、細胞数をカウントした。その結果、セサミン及びセサモール10 μg/mLを処理することにより、50~60%の細胞増殖抑制作用が認められた。がん細胞に対するセサミン及びセサモールの細胞増殖抑制作用を解明するために①アポトーシス誘導に関連する分子をウエスタンブロット法により確認した。セサミン及びセサモールを処理することによりCleaved Caspase3及びCleaved PARPの著しい増加が認められたことから、アポトーシス誘導が関与していることが分かった。②Cleaved Caspase3及びCleaved PARP以外にアポトーシス誘導に関連している分子を見つけるために、セサミン及びセサモールを処理したK562細胞及びK562/DOX細胞からタンパク質を抽出し網羅的なタンパク質解析をSWATHTM Acquisition with MS/MS法(非標識法)とiTRAQ法(標識法)を用いて同定・定量した。明らかに増減するタンパク質が存在していることが分かった。現在、同定・定量したタンパク質の機能解明を検討している。
2: おおむね順調に進展している
セサミン及びセサモール処理によるアポトーシス誘導に関連する分子の同定。K562細胞及びK562/DOX細胞を5×105 cells/フラスコ/ mLにセサミン及びセサモールをそれぞれ1 μg/mL~10 μg/mL添加する。3日間培養した後それぞれの細胞を回収し、セルカウント後、タンパク質を抽出した(処理群)。抽出したタンパク質を用いてウエスタンブロット法によりセサミン及びセサモール処理によるアポトーシス(抗Cleaved PARP抗体)誘導を確認した。アポトーシス誘導が確認されたセサミン及びセサモール処理群とコントロール群(セサミン及びセサモー未処理群)のタンパク質抽出物を用いて、同定と定量を同時に解析できる網羅的なプロテオーム解析(タンパク質発現解析)を2つの方法を用いて行った。A) SWATHTM Acquisition with MS/MS法(非標識法)B) iTRAQ法(標識法)。AとBの方法を同時に行うことにより取りこぼしなく、セサミン及びセサモール処理によるアポトーシス誘導に関連する分子の同定と定量を行った。その結果、有意差をもって増減するタンパク質を数種類、同定と定量した。その後、パスウェイ解析により相互作用する関連タンパク質を探索した。現在、関連タンパク質の機能解明を検討中であり、研究計画全体としておおむね順調に進展している。
K562細胞及びK562/DOX細胞に対するセサミン及びセサモールのアポトーシス誘導による抗がん作用(細胞増殖抑制作用)の解明。セサミン及びセサモール処理による抗がん作用(細胞増殖抑制作用)はそれらによるアポトーシス誘導が関与すると推測された。更に、網羅的なプロテオーム解析 {SWATHTM Acquisition with MS/MS法(非標識法)と iTRAQ法(標識法)}の実験により得られたデータを基にして生物学的な機能の解釈やパスウェイ解析を行う。タンパク質がどの様な遺伝子と関連があるのかナレッジデータベースとして解析する。遺伝子、化合物、疾病、生物学的機能、パスウェイを検索し、詳細な働きやそれに関わる分子を抽出する。→ セサミン及びセサモール処理によるアポトーシス誘導に関連する分子(タンパク質)を抽出する。抽出したタンパク質を用いてウエスタンブロット法、免疫沈降法、ELISA法などにより、アポトーシス関連分子である活性化カスパーゼ分子と相互作用する分子であるかを明らかにする。更に、ELISA法の改良型である多項目同時測定システムを用いることによりアポトーシス関連分子を網羅的に定量し、セサミン及びセサモールの抗がん作用(細胞増殖抑制作用)に関与するレセプター、シグナル因子、制御因子などの分子を多角的に機能解明する。マウスを用いたin vivo実験により、セサミン及びセサモール処理による担がんマウスへの延命効果や健常マウスへの影響(副作用など)を明らかにする。
(理由)本研究を申請するに当たり計上した研究費については、消耗品を主体とした経費が大部分を占める。網羅的なプロテオーム解析(タンパク質発現解析)を2つの方法を用いて行った{ A) SWATHTM Acquisition with MS/MS法(非標識法)B) iTRAQ法(標識法 }が、当初の計画よりも実験が順調に進んだため消耗品費代に計上していた予算を消費する必要が生じなかった。(使用計画)今年度は網羅的なプロテオーム解析で得られた結果を基にアポトーシス誘導に関連する分子(タンパク質)を、ウエスタンブロット法、免疫沈降法、ELISA法などにより相互作用を解析する。また、ELISA法の改良型である多項目同時測定システムを用いることによりアポトーシス関連分子を網羅的に定量し、セサミン及びセサモールの抗がん作用(細胞増殖抑制作用)に関与するレセプター、シグナル因子、制御因子などの分子を多角的に機能解明する。更に、マウスを用いたin vivo実験も実施する予定である。その為、抗体や動物に関連する消耗品費代がかなり必要になることから平成29年度未使用分の110万円+平成30年度分140万円、計250万円(直接経費)を使用する。
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