研究課題
本研究では過酸化型ペルオキシレドキシン2 (Prx2)に対するスルフィレドキシン(Srx)の親和性に由来する生物学的共鳴エネルギー移動を測定した。過酸化水素による酸化型Prx2の過酸化とSrxによる過酸化型Prx2の還元によって形成される擬似赤血球の概日リズム(酸化還元リズム)の振幅の増大に効果的な物質を同定した。最初に活性酸素種を消去するスカベンジャーについて調べた。過酸化水素を消去するピルビン酸は細胞の生存率を高めたが、高濃度では酸化還元リズムの発生を抑制した。また、過酸化水素の前駆体であるスーパーオキシドを消去するマンニトールも同様の結果を示した。リズム形成の誘因となるこれらの活性酸素種はスカベンジャーによって消去されるとリズムが形成できないことがわかった。一方、スカベンジャーを添加しないと活性酸素種によって生存率が低下し、リズムを発振する細胞が減ったため、振幅が短縮した。スカベンジャーが効果的にリズムの形成にはたらくためには、過不足のない適切な濃度で使用する必要があることがわかった。次にエネルギー代謝に関する物質について調べた。ミトコンドリアのない赤血球のエネルギー産生は解糖系に依存しているが、グルコースだけではなく、ATPを構成するアデニンやリン酸によっても生存率が上昇し、振幅が増大した。また、糖原性アミノ酸である非必須アミノ酸混合液やグルタミン、ピルビン酸の代謝産物である乳酸やクエン酸も同様の結果を示した。一方、NADHを構成するニコチンアミドは生存率に変化がなかった。最後に擬似赤血球の膜を保護する物質について調べた。ビタミンEやグルタチオンペルオキシダーゼの活性に必須のセレンによって生存率が上昇し、振幅が増大した。一方、抗酸化物質であるN-アセチルシステインは生存率に変化がなかった。以上の研究から、酸化還元リズムの振幅の増大に効果的な物質を同定できた。
3: やや遅れている
酸化還元リズムの振幅の増大を調べる基本条件の決定が遅れてしまい、研究計画調書で検討する物質として挙げている抗酸化物質を全て網羅できていない。
酸化還元リズムの振幅の増大に効果的な残りの抗酸化物質を調べるとともに、健常者の酸化還元リズムの最下点位相を算出する計算式を導く。
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。
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Transl Psychiatry
巻: 7 ページ: e1106
10.1038/tp.2017.75