研究課題/領域番号 |
17K00880
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
五十嵐 庸 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00277815)
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研究分担者 |
長岡 功 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60164399)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 機能性食品 / 軟骨細胞 / オートファジー |
研究実績の概要 |
変形性関節症は、我が国でも1,000 万人以上の患者がいると推定されている。グルコサミンは軟骨グリコサミノグリカンの前駆物質であることから、我が国やアメリカではサプリメントとして、ヨーロッパでは治療薬として使用されている。その一方で、近年変形性関節症とオートファジーとの関連が注目されている。そこで、サプリメントとして用いられているグルコサミンのオートファジーに対する効果を検討した。 昨年度、グルコサミンが軟骨細胞においてオートファジーを誘導すること、また、オートファジーの上流に位置していると思われるサーチュイン(SIRT)1の発現も増加することが明らかとなった。そこでオートファジー誘導を担うシグナル経路を検討したところ、mammalian target of rapamycin(mTOR)の下流タンパク質であるS6 kinase (S6K) のリン酸化が、グルコサミン添加により変化しないことが明らかとなった。このことよりグルコサミンが、いままで報告例の少ないmTOR非依存的な経路によりオートファジーを誘導することが示唆された。そこでSIRT1とオートファジーをつなぐシグナル経路を検討したところ、SIRT1の標的分子であるp53の382番目のリジン残基のアセチル化がグルコサミン添加により減少することが明らかとなった。p53は382番目のリジン残基のアセチル化により活性化されること、また、p53はオートファジーを阻害することが明らかとなっている。今回の結果は、軟骨細胞においてグルコサミンによりSIRT1の発現が増加し、p53を脱アセチル化することによりその活性を減少させ、オートファジーを誘導している可能性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
軟骨細胞において、グルコサミンがオートファジーを誘導するという、当初の仮説は証明されたものの、当初の計画になかったmTOR非依存的なシグナル経路の同定に時間を費やした。また、研究室移転のための引越作業により、一定期間実験を停止せざるを得なかった。そのため、当初の研究計画よりやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めているシグナル経路の同定を引き続き行い、グルコサミンの軟骨細胞におけるオートファジー活性化経路を明らかにする。またその際、SIRT1依存的か 否かを、阻害剤を用いて検討する。そして明らかになった活性化経路に関わる動物実験を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室移転のための引越作業により、一定期間実験を停止せざるを得なかった。また、動物施設も移転作業により一定期間閉鎖されたため、動物実験の開始も大幅に遅れた。そのため、実験を停止せざるを得なかった期間の実験に相当する部分を次年度に繰り越した。次年度では、シグナル経路の同定を引き続き行うとともに、明らかになったシグナル経路に関わる動物実験を行う予定である。
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