本研究は,乳幼児期のω3系脂肪酸の有無による免疫獲得への影響を,食物アレルギー反応を指標に検討することを目的としている.研究内容は,以下の3項目を実施した. 1. 新生仔期の食物アレルギーの評価方法の確立 2. 母獣養育条件下(母獣免疫あり)での新生仔のω3系脂肪酸欠乏による食物アレルギーの評価 3. 人工哺育条件下(母獣免疫なし)での新生仔のω3系脂肪酸欠乏による食物アレルギーの評価 新生仔期の食物アレルギーの評価方法はまだ確立されておらず,試験の評価前に,成獣のプロトコルを基本として,正常の新生仔を用いて,感作期間やアジュバント,抗原(今回は卵白アルブミンを用いた)の投与容量の検討を行った.その後,ω3系脂肪酸欠乏飼料を与え飼育繁殖して得た,食餌性ω3系脂肪酸欠乏マウスの新生仔で試験を実施した.母獣養育条件下において,今回の感作,評価方法では,ω3系脂肪酸の有無による下痢症状の程度の違いはなく,回腸の病理検査においても細胞表皮の炎症や肥厚などに大きな違いは確認できなかった.人工哺育条件下においては,ω3系脂肪酸欠乏群で下痢症状のスコア値が高く,脾臓細胞のIFNやIL-4に対しての反応が高い傾向にあった.これらのことから,ω3系脂肪酸よりも養育中に母獣から供給される移行免疫の方が影響は大きそうであるが,移行免疫の影響をあまり受けられない環境下では,ω3系脂肪酸は食物アレルギーを低減する可能性がある.今回,人工哺育で得られた新生仔の個体数が少なかったので,今後,匹数を増やして再評価する必要がある.
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