研究課題/領域番号 |
17K00889
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
福島 篤 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (10442716)
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研究分担者 |
萩原 裕子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (90468207)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 血小板由来成長因子受容体α / 視床下部 / 摂食 / MEF2C / 酸素消費量 / 行動量 / 視床下部背内側核 / サーカディアンリズム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中枢性摂食行動調節メカニズムと、視床下部のオリゴデンドロサイト前駆細胞のPDGF(platelet-derived growth factor)受容体α 系(PDGFRα) を介した細胞内シグナル系との関係を明らかにすることである。 平成30年度は、平成29年度で得られた結果をもとにPDGFRaのリガンドの一つであるPDGF-AAを浸透圧ポンプを用いて持続的に脳室内に投与し、行動様式を解析した。その結果、摂食量は変化しないが体重増加をきたす事が明らかとなった。そこでPDGF-AAを持続的に脳室内に投与して、nano tagを用いて運動量、および、代謝ケージを用いた酸素消費量などの行動の変化を測定した。その結果、PDGF-AAは、暗期の運動量を有意に減少させ、同時に酸素消費量を有意に減少させることが明らかとなった。そこで、PDGF-AAのこの作用を仲介する物質を同定する目的で、この暗期の時間に焦点をあて、視床下部の組織を用いて、マイクロアレイによる網羅的な検討を行った。いくつかの遺伝子が変動したが、PDGF-AAは、視床下部において転写制御因子ファミリーの一つであるMyocyte enhancer factor 2C (MEF2C) の発現を減少させることがわかった。一方、熱ショック蛋白質70は増加した。蛋白質レベルでは、Fos蛋白質や熱ショック蛋白質70の発現に変化は見られなかったが、MEF2Cの発現は有意に減少していた。MEF2Cの変化する部位を同定する目的で免疫組織化学を行った。そして、視床下部背内側核でMEF2Cの発現が有意に減少していることが明らかとなった。以上の結果より、PDGFRαを発現しているオリゴデンドロサイト前駆細胞は、視床下部背内側核のMEF2Cを介して摂食調節メカニズムに関与している可能性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、平成30年度中にはPDGF受容体の選択的チロシンキナーゼ活性の阻害剤であるイマチニブを脳室内投与し、検討を行う予定であったが、平成29年度中に検討することができ、今年度は、平成31年度に行う予定であったPDGF受容体のリガンド (PDGF-AA) を用いた実験を行い、視床下部背内側核のMyocyte enhancer factor 2C を介して摂食調節系に関与していることが示唆できたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、PDGF受容体αのリガンドは本当にPDGF-AAなのか(PDGF-AB、PDGF-BB、PDGF-CCも結合する)、遺伝子改変動物とAAV(Adeno-Associated Virus)を用いたMEF2Cの部位特異的な抑制、遺伝子改変動物とAAVによるDesigner Receptors Exclusively Activated by Designer Drugを用いた部位特異的な刺激もしくは抑制、そして最終的には、視床下部背内側核のオリゴデンドロサイト前駆細胞のMEF2Cをknockoutして、摂食調節系におけるオリゴデンドロサイト前駆細胞の役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
節約に努めたため、多少の余剰金が生じたが、思いほのか研究が進展しているので、次年度は、遺伝子改変動物とAAVに消耗品がかかると推測される。
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