研究実績の概要 |
本研究の目的は、中枢性摂食行動調節メカニズムに視床下部のオリゴデンドロサイト前駆細胞のPDGF受容体α (PDGFRα) を介した細胞内シグナル系が関与することを明らかにすることである。前年度においてPDGFRαのリガンドであるPDGF-AAを脳室内に持続投与すると、肥満を惹起することを明らかにした。そして、PDGFRαのリガンドの脳室内持続投与は、視床下部背内側核において、転写調節因子の一つであるMyocyte enhancer factor-2C (MEF-2C)陽性細胞数の抑制をきたすことが明らかとなった。 平成31年度(令和元年度)は、前年度の結果のさらなる検討を詳細に行った。そこでPDGFRαのリガンドが本当にPDGF-AAであるのかを確認するためにPDGF-AA、PDGF-BBおよびPDGF-CCをこれまでと同様の方法を用いて脳室内に持続投与した。コントロール群として、生理食塩水を投与した。その結果、すべてのPDGF投与群 (PDGF-AA ,BB,CC) において生理食塩水投与群と比較し、暗期の行動量が低下して、暗期の酸素消費量が低下した。特にPDGF-AAおよびPDGF-CC投与群において、暗期の行動量低下および暗期の酸素消費量減少が生理食塩水投与群と比較して有意であった。PDGF受容体は、αとβの2種類が存在し (PDGFRα・β) 、先行研究によりPDGF-AA、PDGF-BB、PDGF-CCは、PDGFRαに結合し、特にPDGF-AAおよびPDGF-CCは選択的にPDGFRαに結合することが報告されている。 以上の結果より、視床下部のPDGFRα発現は、視床下部に存在する摂食調節機構に関与している可能性があることがわかった。
|