研究課題
数多くのビタミン輸送研究によって、それぞれのビタミンの吸収効率と動態は詳細に分かっている。しかし、ビタミンの膜輸送を担うタンパク質は、全体像が未だ分かっていない。未だに未解明なビタミン輸送の分子機構を明らかにすることを目的として、どのトランスポーターがどのビタミン及び分子種を輸送するのかを検討した。a. ビタミン輸送特性解明のための各分子種の輸送活性比較~ABCG5/ABCG8発現細胞はコントロール細胞に比べて細胞毒性のあるビタミンK3に対する耐性が高かったことから、細胞外へ排出することが示唆された。ビタミンKにはK3以外にもK1 (フィロキノン)のような分子種が存在する。ABCG5/ABCG8発現細胞はコントロール細胞に比べて細胞内のビタミンK1蓄積量が低く、細胞外への排出量が高かった。従って、ABCG5/ABCG8はビタミンK1の輸送にも関与することが示された。b. 精製ABCトランスポータータンパク質の調製とATP加水分解活性測定~動物細胞株にABCB1及びABCB6を安定的に発現させ、精製を行い、精製標品をリポソームに再構成した。ABCトランスポータータンパク質は、輸送基質存在下でATP加水分解活性が上昇することから、ビタミンB12を添加しATPase活性の測定を行った。その結果、 ABCB1ではビタミンB12存在下でもbasal(基質がない状態での)ATPase活性と変わらずビタミンB12の輸送に関与していないと考えられる。一方、ABCB6ではビタミンB12添加でbasal ATPase活性に対して1.2~1.3倍の活性が得られた。ABCB6はミトコンドリアに発現し、ポルフィリンの生合成やヘム代謝に関与している事が示唆されていることから、金属ポルフィリンの錯体であるビタミンB12を輸送する可能性がある。
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