研究課題
平成29年度は、ビタミンD栄養と血圧・心血管疾患との関連を検討するための3年間の前向き観察研究の立ち上げを行い、対象者の研究開始時点のデータの採取を予定していた。これを目標として、現在、約700名の基礎データ採取に着手することができた。現在はこれらの対象者に対して、血中ビタミンD代謝物濃度の測定と血中PTH濃度の測定を進めているところである。対象者は20歳代~60歳代の男女であり、ビタミンD栄養の解析と共に他の食事摂取状況や健康状態も併せて調査し、データベースを構築中である。現在の解析の状況から日本人の一般健常者のビタミンD栄養状態を知ることができた。一方、動物実験による基礎検討では、VDRKOマウスの心血管疾患関連マーカー(血圧、心臓、血管の組織学的解析、組織学的観察、心血管疾患関連因子(レニン-アンジオテンシン系関連因子、ナトリウム利尿ペプチド、筋収縮関連タンパク質:α-アクチン、ミオシン重鎖)の遺伝子発現の解析を進め、VDRKOマウスにおける血圧上昇とレニン-アンジオテンシン系関連因子との関係を得ることができた。これに加えて、現在はビタミンDとカルシウムの栄養調整ラットの飼育を行い、解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度に予定していた疫学研究の着手および動物実験はほぼ順調に進んでおり、今後、さらに解析を進められる状態にあるため
疫学研究については、平成29年度に登録された対象者に加えて、今年度も引き続き対象者を集め、随時解析を行う。各疾患とビタミンD栄養との関係をまずは横断的手法により解析し、継続的に観察できた対象者についてはカプラン・マイヤーの生存分析、ロジスティック回帰分析で解析する。血圧や各種パラメーターと血中25OHD濃度が有意な関係を示した場合、そのカットオフ値を求める。カットオフ値の算定は、以前に開発した曲率を用いた新規栄養解析法(Tsugawa N, et al. Clin Nutr 2012; 31:255)で行う。動物を用いた基礎研究においては、平成29年度に開始した実験を平成30年度以降も継続的に検討する。これらの実験を経た上で、ビタミンD栄養条件調整下、高ナトリウム食あるいは腎疾患誘発により血圧上昇を誘導し、この誘導に対する感受性を比較する予定である。
平成29年度は使用予定額をわずかに下回ったが、ほぼ予定通りの使用状況であった。H29年度の差引残額は次年度研究において血中濃度測定あるいは動物実験の費用として使用する予定である。
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