研究課題
平成30年度は、昨年度に引き続きビタミンD栄養と血圧・心血管疾患との関連を検討するための観察研究を実施した。前向き研究の実施が困難になったため、横断的研究で幅広い年齢層の男女について1500名程度のデータを採取し、現在はこれらの対象者の血中ビタミンD代謝物濃度の測定と血中PTH濃度の測定を進めているところである。対象者は20歳代~60歳代の男女であり、ビタミンD栄養の解析と共に他の食事摂取状況や健康状態も併せて調査し、血圧・心血管疾患だけでなく骨代謝関連指標も併せて多臓器関連の検討データベースを構築中である。現在の解析の状況から日本人の一般健常者のビタミンD栄養状態を知り、加齢とともに骨に対するビタミンD栄養状態の影響が強くなることを確認した。また、血圧に対してはPTH濃度の影響が強く、そのメカニズムについて考察中である。一方、動物実験による基礎検討では、昨年度行ったVDRKOマウスにおける血圧上昇とレニン-アンジオテンシン系関連因子との検討に加え、若齢および成熟ラットにおけるビタミンDとカルシウムの栄養調整ラットの飼育を行い、カルシウム摂取量がビタミンDの栄養維持に大きく関与することを確認した。
2: おおむね順調に進展している
前向き検討が困難になったものの、平成29年度から進めている健常者を対象とした疫学研究のと動物実験はほぼ順調に進んでおり、今後、さらに解析を進められる状態にあるため
疫学研究については、平成29~30年度に登録された対象者に加えて、今年度も引き続き対象者を集め、随時解析を行う。各疾患とビタミンD栄養との関係を横断的手法により解析し、継続的に観察できた対象者についてはカプラン・マイヤーの生存分析、ロジスティック回帰分析で解析する。血圧や各種パラメーターと血中25OHD濃度が有意な関係を示した場合、そのカットオフ値を求める。カットオフ値の算定は、以前に開発した曲率を用いた新規栄養解析法(Tsugawa N, et al. Clin Nutr 2012; 31:255)およびROC解析で行う。動物を用いた基礎研究においては、平成29~30年度に開始した実験に加え、ライフステージの影響を検討するため骨粗鬆症モデルラットを用いた検討を行うこととした。これらの実験を経た上で、ビタミンD栄養条件調整下、高ナトリウム食あるいは腎疾患誘発により血圧上昇を誘導し、この誘導に対する感受性を比較する予定である。
動物実験においてビタミンDあるいは血圧調節、骨代謝調節の標的遺伝子をリアルタイムPCR法にて検討していたが、機器の不調により継続的な検討が困難になった。そのため、試薬類の使用が予定よりも少なくなり、次年度使用額が生じた。また、機器については修理を考えているが、それが困難な場合は機器の買替えの必要も生じ、次年度使用額についてはこれらの一部に充てたいと考えている。
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