研究実績の概要 |
最終年度は、昨年度に引き続き横断的研究による20歳代~60歳代の男女2044名の血液検体を新たに採取し、血中ビタミンD代謝物[25(OH)D3, 25(OH)D3、24,25(OH)2D3]濃度の測定を完了させることができた。毎月200名前後の検体を採取したことから、近年の典型的な健常日本人成人の血中ビタミンD代謝物濃度の季節変動を追跡することができた。ビタミンD栄養の解析と共に他の食事摂取状況や健康状態も併せて調査し、血圧・心血管疾患だけでなく骨代謝関連指標も併せて多臓器関連の検討データベースを構築中である。また本研究では、通常の日常生活を送りつつも日々感じる疲労やストレス要因がビタミンD栄養に関連することを示唆するデータを得た。本研究結果はこれまでに報告のないものであり、今後の国民のビタミンD栄養改善に大きく貢献できる成果と考える。 一方、動物実験による基礎検討では、若齢、成熟ラットおよび卵巣摘出骨粗鬆症モデルラットを用いて、ビタミンDとカルシウムの栄養状態を調整した条件下で飼育を行った。その結果、ビタミンD栄養状態(血中25(OH)D3濃度維持)はカルシウム摂取量の影響を受け、特に若齢期での影響が顕著であることを確認した。また、各条件下で飼育した動物の腎臓CYP27B1の遺伝子発現量をリアルタイムPCR法で検出した結果、低カルシウム摂取の条件下で血中25(OH)D3濃度が低下する原因の1つにCYP27B1の遺伝子発現上昇を介した活性代謝物への代謝促進が関与することを確認した。
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