研究課題/領域番号 |
17K00896
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
室田 佳恵子 近畿大学, 理工学部, 准教授 (40294681)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ホスファチジルコリン / DHA |
研究実績の概要 |
平成29年度は、グリセロリン脂質の構成脂肪酸種が消化吸収性に与える影響をリンパカニュレーションラットを用いて検討した。n-3系多価不飽和脂肪酸であるDHAが主としてsn-1位あるいはsn-2位のいずれかに結合したホスファチジルコリン (1-DHA-PCおよび2-DHA-PC) を酵素合成により入手し(連携研究者 渡辺嘉氏による)、DHAの含有量とリン脂質量を調製したサンプルをラット十二指腸に投与した。投与後6 hまで1 hごとにリンパ液を分取し、TLCを用いてトリグリセリド画分とリン脂質画分に分けた。ついで、リンパ液に出現する脂質中の総脂肪酸分析ならびに各画分中脂肪酸分析を行った。その結果、投与後1 hにおけるリンパ液中総脂肪酸量ならびにトリグリセリド画分中脂肪酸量が、2-DHA-PC投与時に有意に低く、1-DHA-PCは2-DHA-PCに比べてリンパ液へ出現するのが早いことが示唆された。リン脂質画分中脂肪酸量については有意差が見られなかったが、2-DHA-PC投与時に低くなる傾向を示した。一方、投与後6 hまでの総吸収量や、トリグリセリドおよびリン脂質への生合成の比率には差が見られなかったことから、この結果は、膵酵素消化における基質として2-DHA-PCが利用されにくいためだと考えられた。今後動物実験のn数を増やすとともに、混合物であるパンクレアチンだけでなく、膵液中の個々の酵素を用いたin vitro試験を行い、リン脂質のsn-2位に結合したDHAの加水分解速度が遅いことを明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の初年度として、リン脂質のグリセロ骨格における脂肪酸の結合位置は、膵酵素による消化性に影響を与えることを示唆する結果を得ることができた。構成脂肪酸の種類による影響についてはまだ十分検討できていないが、サンプルの入手は完了しており、すぐに着手することができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、これまでに実施したDHA結合リン脂質に加えて、DHA以外の多価不飽和脂肪酸を結合したリン脂質の吸収実験ならびに消化実験を行い、リン脂質における多価不飽和脂肪酸の結合位置や不飽和度が膵酵素や小腸粘膜酵素の基質特異性に及ぼす影響を明らかにしていく。すでに、n-6系脂肪酸として、リノール酸含有ホスファチジルコリンとアラキドン酸含有ホスファチジルコリンを入手している。また、小腸上皮における酵素的分解経路や膵酵素消化産物の動態を明らかにするため、小腸粘膜ホモジネートならびにヒト小腸モデルであるCaco-2細胞を用いて、リゾホスファチジルコリンの動態を検討する。特に、リゾホスファチジルコリンから直接リン脂質の再構成が起こる場合と、さらに分解してグリセロホスホコリンなどのコリン化合物が生じる場合について、結合する脂肪酸種や脂肪酸の結合位置による影響が見られるかどうか明らかにすることを目指す。平成30年度より所属が変更となり、実験室の立ち上げに時間を要するため、年度前半は研究の進みが遅くなると予想されるが、前述の通り、すでにサンプルは入手できており、着手後は問題なく研究を遂行できるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年2月頃に、平成30年4月から異動することが決まったため、年度末の実験を一時中断したことで残額が生じた。異動先での実験室の立ち上げにともない、分析機器の調整費など申請当初には予定外の支出が必要になるため、次年度に繰り越して使用することとした。
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