研究課題/領域番号 |
17K00900
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
鎌尾 まや 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (40299087)
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研究分担者 |
廣田 佳久 芝浦工業大学, システム理工学部, 助教 (70724277)
須原 義智 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (30297171)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ビタミンK / menadione / 抱合体 |
研究実績の概要 |
食事性ビタミンKから活性型ビタミンKへの変換中間体であるmenadione(MD)は、血中において何らかの抱合体の形態で存在していると予想される。H29年度はその候補化合物であるMD-グルタチオン抱合体およびMD-N-アセチルシステイン抱合体を化学的に合成し、定量法の標準品として用いるべく精製した。これらについてLC-MS/MSによる定量法を確立するためのイオン化法を検討し、エレクトロスプレーイオン化法が適切であると判断した。 また、ビタミンK利用組織の一つである肝臓由来のHepG2細胞を用いて、MDの代謝やビタミンKの側鎖切断反応について検討した。その結果、MD添加後24時間目では未変化体MDとして検出されたのは添加量のわずか1%程度であり、大部分が速やかに代謝されることが明らかとなった。添加量の6%に相当する分は酸加水分解処理によりMDとして検出されたことから、一部はグルクロン酸抱合体や硫酸抱合体に代謝されるものと推察された。残りのMDはグルタチオン抱合体やN-アセチルシステイン抱合体等に代謝されている可能性が考えられる。HMG-CoA還元酵素阻害剤であるスタチン類共存下でビタミンK1(phylloquinone、PK)およびビタミンK2(menaquinone-4、MK-4)から側鎖が切断されたMDの産生について検討したところ、PKとMK-4から同程度のMDが産生すること、スタチンの用量依存的にMD量が増加することが明らかとなった。 さらに、尿中MD排泄量とビタミンK摂取量の関係を明らかにする目的で、PK含有量を段階的に変化させた飼料で飼育したマウスの尿、血漿および肝臓、膵臓、精巣、脳の各組織を採取した。現在、MDの抽出を行っており、順次、MD含量を測定していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
活性型ビタミンKへの変換中間体であるMDの生体内における存在形態の4つの候補のうち、MD-グルタチオン抱合体およびMD-N-アセチルシステイン抱合体の合成と精製を達成した。また、培養細胞を用いてMDの代謝やビタミンKの側鎖切断反応に関する有用な知見を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度に合成したMD-グルタチオン抱合体およびMD-N-アセチルシステイン抱合体について、LC-MS/MSを用いた血漿や尿抽出物における測定法を確立する。MDおよびPKを投与したマウスの血漿やMD共存下で一定時間培養した細胞サンプルを用いて、MD-グルタチオン抱合体およびMD-N-アセチルシステイン抱合体の検出を試みる。これにより、活性型ビタミンKへの変換中間体であるMDの体内における存在形態推定のための情報が得られる。生体試料においてMD-グルタチオン抱合体あるいはMD-N-アセチルシステイン抱合体が検出された場合は、当該化合物の重水素標識体を合成し、それを内部標準物質とした定量法を確立する。並行して、MD-グルクロン酸抱合体やMD-硫酸抱合体についても測定法確立のための標品の調製を試みる。 また、ビタミンK代謝とビタミン K 栄養状態の関係を明らかにする目的で、既に、PK 含有量を段階的に変化させた飼料でマウスを飼育し、尿、血漿および肝臓、膵臓、精巣、脳の各組織を採取している。これらについて、二クロム酸カリウム処理後のMD検出量(加水分解により遊離するMDの総量)とβ‐グルクロニダーゼ処理後のMD検出量(グルクロン酸抱合されたMD量)を測定し、これらの比がどのように変化するかを解析する。また、 尿中MD排泄量がビタミンK栄養状態の評価指標となり得るかを明らかにする目的で、尿中MD排泄量と PK摂取量、血中ビタミンK類縁体(MD、PK、MK-4、MK-7)濃度およびビタミン K 不足の指標となる低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC)濃度との相関性についても解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
内部標準物質として用いる重水素標識体が輸入手配となったため、納品が遅延し、H29年度に支払が完了しなかったため。
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