研究課題
我々の研究グループは、ヒトのFceRIを発現するラット由来マスト細胞株RS-ATL8細胞を樹立し、ヒト血清中に存在する抗原特異的なIgE抗体を簡便に検出するEXiLE法を開発した。本RS-ATL8細胞株は、IgEシグナルによる脱顆粒応答を正常に保持しており、マスト細胞のシグナル伝達を制御する因子の探索に利用する事が可能である。そこで本研究では、食品由来低分子化合物ライブラリー及びキノーム別に分類される220種のプロテインキナーゼ作動薬・拮抗薬ライブラリーからマスト細胞の脱顆粒を制御する分子の探索を行った。前年度までの解析により得られたマスト細胞の脱顆粒制御候補化合物21種のうち、そのほとんどが既報のシグナル伝達経路や、転写活性に直接作用する化合物であった。しかし、2種の化合物については、同一の新規シグナル伝達経路の存在を示唆する作用点を有しており、市販の他の作動薬を用いて本経路のIgEシグナル伝達における重要性を検証したところ、RS-ATL8細胞のヒトIgEシグナルによるNFAT依存的転写活性を抑止し、マスト細胞の脱顆粒応答に影響を持つ事が確認された。そこで最終年度は、本シグナル経路の重要性について、阻害剤や遺伝子ノックダウンによる影響をマウス骨髄由来マスト細胞を用いて検証を行う。また一方で、IgEシグナル伝達阻害候補化合物を含む食品をマウスに投与し、食物アレルギー病態が軽減されるかどうかを検討する。
3: やや遅れている
スクリーニングにより得られた候補化合物は入手が困難であり、市販の同一作用点を持つ化合物については高価であるため、食物アレルギーマウスモデルへの投与実験等が実施できていない。代替え実験等を検討しながら進めている。
マスト細胞の脱顆粒を制御する活性物質のターゲット分子の解析により、マスト細胞の新規IgEシグナル伝達経路の存在が示唆された。そこで、本経路が実際にマスト細胞の脱顆粒応答において重要な役割を果たしているかについて他の阻害剤等を用いて検討する。また、ヒトアレルギー患者血清に含まれるIgEに依存した抗原特異的なマスト細胞のシグナル活性化が遮断できるかを確認する。さらに、食物アレルギーモデルマウスに投与し、候補化合物の抗アレルギー作用について検討を行う。
予定していた実験の進行にやや遅れが生じたため、予算と実際に使用した額の間に差が生じた
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Mol Immunol.
巻: 106 ページ: 127
30597474
J Agric Food Chem.
巻: 67 ページ: 5680
31062597
J Allergy Clin Immunol
巻: 143 ページ: 1878
30339851